安倍首相の施政方針演説では、日本を取り巻く緊迫した軍事情勢と、それに対する政府の基本方針が全く語られなかった。さすがに安倍政権寄りの一部日本メディアも、その姿勢には少なからぬ危惧の念を表明していたようである。
だが、それらのメディア以上に不満を口にしているのが、極東軍事戦略に携わるアメリカの軍事関係者たちだ。
日本を取り巻く不穏な情勢への言及は?
米海軍関係大学院で極東戦略の教鞭をとる退役将校は次のようにこぼす。
「安倍政権は昨年、国民的議論として盛り上がった安全保障関連法案を成立させた。その際、せっかくリーダーシップを発揮した(アメリカの軍関係者たちの目から見てだが)にもかかわらず、その後は日本の具体的な国防政策に目立った動きが見られない。安倍首相の施政方針演説でも、安全保障関連法制に基づいた国防戦略や具体的方針などへの言及がなされなかった。
アメリカと違って、スローテンポでじわりじわりと政策転換を進めていくのが“日本方式”なのかもしれない。しかし、日本を取り巻く軍事情勢は急展開している。日本国内の内政問題と違い、相手が外国勢力である軍事外交に“日本方式”は危険ではなかろうか?」
たしかに、昨年(2015年)末から正月を挟んでのわずかの期間だけでも、以下のような出来事が立て続けに起きている。