台湾で、独立志向の民進党が総統選と立法院選の両方で圧倒的な勝利を飾った。この出来事は米国の対中政策および対台湾政策をどう変えるのだろうか。
オバマ政権は従来の姿勢を変える気配をみせない。だが政権周辺では、台湾での選挙結果を中国の攻勢を抑える「圧力」材料とする案や、年来の「1つの中国」政策(台湾は中国の一部であるとする立場に基づいた政策)が変化する可能性を唱える主張が目立ってきた。
1月16日の台湾の総統選挙では、民進党の蔡英文候補が国民党の朱立倫候補を圧倒的な大差で破った。議会にあたる立法院の選挙でも民進党が多数を制した。この選挙結果は、台湾住民の台湾人意識の高まりや、国民党の馬英九政権の中国接近政策への反発の強さを示した動きとみられている。
国際監視団の一員として現地でこの選挙を観察した杏林大学名誉教授の田久保忠衛氏は、「今回の選挙で最も強く示されたのは、台湾の民主主義と台湾人のアイデンティティー(自己認識)だった」と言う。
同氏によると、今回の選挙は民主主義の原則に徹して行われ、独裁制の中国との対照を改めて鮮烈に印象づけた。しかもそのプロセスでは、台湾住民たちの「自分たちは中国人ではなく台湾人だというアイデンティティー」が明確に示されたという。