軽井沢町の国道18号線・碓氷バイパスで1月15日未明に発生し、死者15人を出したスキーバスの事故について、現時点(本稿執筆は事故発生から1週間)で見えてきたことをまとめておきたい。重大な事故であると同時に、その事故発生に至る状況、そして事故調査・分析において、今の日本で道路交通の安全性を高めるために取り組んで行きたい多くの要素が現れているからだ。
こうした事象を分析し、事故に至るプロセスを「フィルムを巻き戻すように」(筆者の大学・研究室時代の恩師の言葉)推定・再現を試みる場合、本来ならば現地に足を運んで残されている痕跡などを確認し、そこから運動状態の推定を進めてゆくべきだが、今回はテレビやネットなどでも多くの映像(動画、静止画)が公開されている。また事故現場は筆者自身が昨年も含めて何度も走ったことがある道なので、まずは2次情報に基づく分析となることをご容赦いただきたい。
「規定強化」にもかかわらずまたしても事故
今回、碓氷バイパスで事故を起こしたバスは、旅行業者が企画し、貸切バス事業者に運行を委託する「ツアーバス」であった。
許認可制から届け出制に変わった2000年の「規制緩和」以来、大型バスを5台使えれば「貸切バス」事業者として許可申請することができるので、小規模の事業者が一気に増えた。今回の「イーエスピー」社は会社設立が2008年、2014年に貸切バス事業の許可を得た新規参入組であり、仕事の請け方やその価格に始まり、運行計画と実際にバスを走らせる中での刻々の管理、運転者の勤務状態や健康状態の確認、さらには労務管理全般まで、多くの問題を抱えたままバスを走らせていた。そのことは、事故を受けて同社に入った関係官公庁の調査と、その内容を伝えた多くのニュースからも明らかである。
とはいえ、2012年の関越道でのツアーバス事故でも、同じように事業者側の問題と、運転者が長距離バスの運転に不慣れだったことが浮かび上がり、それをきっかけに「新高速乗合バス」への移行と運転者の運転時間・距離の規定強化が急ぎ制定されている。具体的には、1運行あたり9時間まで、かつ昼間500キロメートル・夜間400キロメートルまで、夜間運転は連続4夜まで、高速道路の運転はおおむね連続2時間まで、運転4時間ごとに合計30分以上の休憩などが定められた。
しかし、その施策はバス事業と運行の現実に対して十分な効果をもたらすには至らなかった。それが今回、再び重篤な事故が発生したことによって示されたのではないだろうか。