ニクシュ氏 北朝鮮は核兵器を完全に開発して、米国を含む関係各国とできるだけ対等に対峙したいと考えています。その手段が核武装ということでしょう。
北朝鮮は自国が「核兵器の保有国である」と他国にはっきりと認知させたい。そこで、核をめぐる交渉ではまず譲歩らしい動きをみせて相手を楽観させ、期待させ、油断させたところで反転して、相手が阻もうとした核武装の動きを大きくみせるという実に巧妙な戦術をとってきました。
オバマ政権はヒラリー国務長官の時代から6カ国協議などを中心に「戦略的忍耐」という慎重策をとってきました。しかし今回の事態はその政策を破綻させたともいえます。交渉による非核化の実現はもう難しいのではないでしょうか。
――ではオバマ政権はどうすべきでしょうか。
ニクシュ氏 当面は国連を舞台にして北朝鮮への制裁を強化するということでしょう。ただし、今回は中国を全面的に巻き込んで北朝鮮への石油と天然ガスの全面禁輸を実現しないと効果はあがらないと思います。
これまでオバマ政権は中国に全面的な協力を迫ることをしませんでした。しかし、北朝鮮が燃料や食糧の輸入を根本的に依存している中国の姿勢が変化しない限り、経済制裁は効果を発揮しません。
なお軍事面で米国ができることは、グアム島に戦略爆撃機B2あるいはB52の編隊を新たに駐留させ、北朝鮮の近くへ頻繁に飛ばして演習などを続けることです。この軍事行動は北朝鮮を威嚇して抑止の効果を生みます。
――中国は北朝鮮に対して本当に大きな力を持っているわけですか。
ニクシュ氏 中国は北朝鮮の存続を左右できるほどの力を持っているといえます。燃料や食糧以外にも、中国は北朝鮮政権の存続に不可欠な軍や党のエリート層への贅沢品の輸出にも大きな役割を果たしています。
ただし、北朝鮮の核武装には反対でも、それを阻止する大胆な措置をとって金正恩政権が崩壊するような事態は避けたいというのがこれまでの態度でした。今回、もしも北朝鮮の非核化を真剣に求めるならば、この態度を根本的に改め、燃料や食糧の供与の停止をテコにして核兵器の放棄を迫るべきです。オバマ政権はそのことを中国に求めるべきです。