コメダ珈琲店にて。2015年12月筆者撮影。

 少し前までは郊外で多く見かけていた「コメダ珈琲店」。最近は駅近くや都心部でも見かけるようになってきた。店舗数拡大の勢いは留まることを知らず、2015年11月末時点で全国657店舗に達している。

「コメダ」と聞けば、名古屋の喫茶文化の代表格というイメージもある。だが、考えてみれば昔から喫茶店はあったし、なにも名古屋に限ったものではない。「モーニング」のサービスを実施する喫茶店も多い。

 では、なぜコメダは全国へと拡がり、飽きられることなく“コメダファン”を増やしているのだろうか。

「店舗をどれだけ増やしても、“コメダもどき”は絶対につくらない」──。

 店舗展開のポリシーをこう語るのは、臼井 興胤(うすい・おきたね)社長だ。ナイキジャパン営業リテール統括本部長、日本マクドナルドCOO、セガ・エンタープライゼス社長を歴任し2013年7月1日にコメダの社長に就任した。

 約50年かけて本拠地・中京エリアで培った信頼、ブランドを損なうことなくコメダを全国展開することが、自らのミッションだと語る臼井氏に、「拡大」と「クオリティ」を両立する経営の秘訣を聞いた。前後篇の2回に分けてお届けする。

店舗の顔は「コメダのひと」

 何を隠そう筆者も学生時代から通い続けるコメダファンの1人だ。大抵、コメダに行くときには「コーヒー以外」の目的がある。それは書き物などの作業だったり、モーニング目当てだったり、おしゃべりだったりと、さまざまだ。

 いくつかの店舗を利用してきて、いつも感じるのは、初めての店を訪れても「初めて」を感じさせないこと。

 木・漆喰・レンガの統一感、隣の席は気にならないが孤独も感じさせない計算されたパーテション、一度座ると離れられなくなるソファー・・・。どの店舗でも、すぐに空間に溶け込める安心感がある。要は、落ち着くのだ。客なりに店の回転数を気にしながらも、急かされないことについ甘え、1時間、2時間と長居してしまう。

 こうした、どこでも変わることのないコメダならではの心地よさは、店舗づくりが完全にマニュアル化、規格化されているからだと思うかもしれない。だが臼井氏は、常に同じ店をつくっているわけではないという。