動画や写真の共有といったウェブサイトを運営する企業には違法コンテンツを削除する義務があるのだろうか? その判断が9月23日、スペインで行われた裁判で下された。
著作権侵害の動画コンテンツを放置しているのは違法だとして、スペインのテレビ局が米グーグル傘下の「ユーチューブ(YouTube)」にコンテンツの削除などを求めていた訴訟で、マドリードの裁判所がテレビ局側の訴えを退けたのだ。
訴えたのは民放テレビのテレシンコ。同社が権利を持つ番組コンテンツを、ユーザーが投稿している行為をユーチューブが見過ごしているのは違法だと訴えていたが、裁判所はユーチューブ側が自主的にコンテンツを削除する義務はないと判断した。
これを受けてテレシンコは、「少なくとも裁判所は違法コンテンツ排除の必要性や緊急性を認めており、我々は満足している」と述べ、即日控訴したことを明らかにした。
一方のグーグルは「インターネットの勝利」と題する声明文を同社のウェブサイトに公開している。
ネットサービスはメディアなのか?
テレシンコ側は、ユーザーが投稿する動画を検閲することなくサイトに掲載している行為を問題視しているが、グーグルは、毎分24時間分の動画が投稿される現状で、個々のコンテンツを確認することは不可能と主張。何が著作権侵害なのかを判断するのは我々ではなく、著作権保持者だとしている。
また、このことは写真やテキストといったコンテンツにも言えることで、もし検閲を義務づけられれば、「フェイスブック(Facebook)」や「マイスペース(MySpace)」「ツイッター(Twitter)」といったネットサービスの運営も不可能になるとしている。
米ニューヨーク・タイムズの記事によるとこの訴訟の争点は、ネットサービスが、単にコンテンツ共有の場を提供するだけのものなのか、あるいはテレビ局のようなメディアなのかといった点にある。前者であれば、ネットサービスには違法コンテンツを自ら探して排除していくという義務は生じない。
著作権保持者の指摘や要求に応じてその都度、削除していけばよいということになる。
グーグルの声明もこの点を強調しており、ユーチューブはインターネット・ホスティング・サービスの企業だと断言している。「コンテントID」と呼ぶコンテンツ管理ツールを提供しており、ホスティング会社としての義務も果たしていると主張している。