事故から約30年、チェルノブイリで野生動物が増加

ウクライナ・チェルノブイリ原発の原子炉建屋を覆うために建設が進められている新シェルター。(2015年5月1日撮影)〔AFPBB News

 9月21日から25日にベラルーシで開催された原子力災害の勉強会に参加した。この勉強会の主催者は、フランスのCEPN、ベラルーシのRIR、ヨーロッパのNERISという団体である。

 CEPNはEDF(フランス電力会社)、IRSN(フランス放射線防護・原子力安全研究所)、CEA(フランス原子力庁)、AREVA(フランスにある世界最大の原子力産業企業)が出資して1976年にできたNPOである。

 つまり、フランスの原子力業界が出資するNPOである。対して、RIRはベラルーシの政府機関である災害対策省の下部組織であり、チェルノブイリ原発事故の対策を目的としている。

 NERISは、欧州の放射能災害や復興の計画・対策の向上のために2010年に設立された、55の原子力関係団体が加入するプラットフォームである。

先住民族の文化が破壊される恐れ

 このグループはこれまでにも、原子力発電所の事故があった地域、原子力災害の影響が残る地域での勉強会を行っている。例えば、昨年にはノルウェーのトロムセという場所で開催された。

 ノルウェーにはチェルノブイリ原発事故後に飛散した放射性物質が降り注いだ地域がある。現在でも、野生のトナカイやキノコ、ベリー類を中心に放射性汚染が残存している。

 このトナカイの肉を年間15~20キロも摂取するのがサーミ人だ。サーミ人はラップランドと呼ばれるスカンジナビア半島北部に住む遊牧民である。

 13世紀頃、ゲルマン民族の国々がノルウェー、スウェーデンなどの国家を形成すると、その支配下に置かれ、その後の先住民族軽視の風潮の中でサーミ文化は衰退傾向にある。

 近年になり、観光資源、文化保護の観点からサーミ文化が見直されている。そのため、トナカイによる内部被曝が問題となっても、彼らの食生活を大幅に変えることは困難だ。