「特攻を美化してはだめ」 元隊員ら、戦争知らない若者に警鐘

茨城県鹿嶋市の旧大日本帝国海軍基地のそばの公園に展示されている旧日本軍の特攻機「桜花」のレプリカ〔AFPBB News

 福岡ソフトバンクホークスが圧倒的強さを見せつけ優勝を決めたパ・リーグ。空前の大混戦のセ・リーグ。CS、日本シリーズ、国際大会「プレミア12」。野球好きにはまだまだ楽しみ尽きないこの時期は、多くの選手が引退を決意する時でもある。

 谷繁元信捕手、小笠原道大内野手、和田一浩外野手といった名球会入りの名選手、36歳にしてMLB入りを果たした斎藤隆投手、2000本安打までもう一歩だった谷佳知外野手の名もある。

 その戦いの記録は後世まで残されるが、一方で、増え続ける膨大な記録の中に大多数の選手の記憶が埋もれていく。「浪速の春団治」川藤幸三外野手、稀代のパフォーマー新庄剛志外野手など「記録より記憶に残る選手」の記憶もやがて埋もれてしまうのだろうか・・・。

 こうした危惧は歴史そのものにもある。「ユネスコ(世界)記憶遺産(Memory of the World)」は、記憶の消えかねない記録を後世に伝えるため、古文書、書物など歴史的記録物を保全しようというもの。

ぜひ見てほしい『炭鉱に生きる』

 「マグナ・カルタ」「アンネの日記」「ベートーヴェン交響曲第9番自筆楽譜」など、日本からは、山本作兵衛が筑豊の炭田での自らの記憶を記録した炭鉱画や日記などが、2011年、初めて登録された。

画文集 炭鉱に生きる

 海底炭坑で栄えた長崎の軍艦島などが世界遺産登録に向かうなか、植民地時代の「強制」労働をめぐり日韓関係は揺れたが、そもそも我々の多くは「炭坑(ヤマ)人」の暮らしそのものをよく知らない。だから、内部から描くこれらの記録は実に貴重である。

 画文集「炭鉱に生きる」、ドキュメンタリー『炭鉱に生きる』(2004)『坑道の記憶~炭鉱絵師・山本作兵衛』(2013)など、機会があれば、ぜひ接して見てほしい。

 いまやスマホで動画は撮り放題、自撮りも当たり前、「自分史」動画をため込む人も少なくないが、『ファイナル・カット』(2004)は究極の自分史映像をめぐる物語。20人に1人が脳にチップを埋め込み、生下時から「人生を記録」する近未来SFである。

 子供はそれなりの年齢に達し初めてチップのことを知らされ、そこから「人生が永遠に残る」ことを意識しながら生活することになる。監視カメラに睨まれ続けるような毎日だ。