アルジェのカスバ

 『ジャッカルの日』(1973)『戦争の犬たち』(1980)など映画化作も多いベストセラー作家フレデリック・フォーサイスが、20年以上にわたり英国情報部MI6と協力関係にあったことを、英国紙とのインタビューで語った。

 政治的事実に大胆にフィクションを重ね上げていくそのサスペンス小説は、事実と虚構の境目の微妙さも魅力。代表作『ジャッカルの日』は、極右の秘密武装組織OASにシャルル・ドゴール大統領暗殺を託された「ジャッカル」を名乗る殺し屋の物語である。

 その目的はアルジェリア独立阻止。かつてレジスタンスが戦った国が、迫害者の側に回る矛盾のなか、レジスタンスの英雄ドゴールが独立を認めたのだった。

 カスバを拠点に繰り広げられる独立運動で頻発する「テロ」の様子は、セミドキュメンタリータッチの傑作『アルジェの戦い』(1966)にも描かれている。

 しかし、その一方でOASによる暴力も、アルジェリアで、フランスで、人々を恐怖に陥れたのだった。

世界で学生運動が起こった60年代

 独立に向かうアルジェリアの支えになった「ポストコロニアル理論の先駆者」精神科医のフランツ・ファノンの思想には、現状打破の政治的手段としての暴力抵抗運動、という考えが含まれてもいた。

 学生運動が各地で展開された1960年代末、多くの若者が世界を変えようとした。しかし、チェ・ゲバラが、キング牧師が暗殺され、自由への闘争と革命の時代は、無差別攻撃、国際テロへと変性していく。

 そんななか、パレスチナ解放人民戦線(PFLP)の国際主義のもとに、「世界革命」を望む若者が集まった。

 その1人、イリイチ・ラミレス・サンチェス、通称「カルロス」は、のちに、遺留品に「ジャッカルの日」があったことから、メディアが「カルロス・ザ・ジャッカル」と呼び「最も有名なテロリスト」となる人物である(実は本人の持ち物ではなかったと言われているが)。

 そんな男の一代記『カルロス』(2010)は、ドラマ化されたフィクションだが、ベースは中東を中心とした陰謀と暴力まみれの現代国際政治史。日本赤軍のハーグ事件に始まり、1975年、ウィーンでのOPEC総会襲撃事件が1つのハイライトとなる。

 「OPECの使命は、第三世界への支援。帝国主義者を支持することではない」と語り、閣僚たちを人質に、アルジェリアへと飛行機で向う。