『エルム街の悪夢』(1984)『スクリーム』(1996)などのホラー映画で知られるウェス・クレイヴン監督が、8月30日、ロサンゼルスの自宅で亡くなった。76歳だった。
悪夢と交錯する現実の恐怖を描いた『エルム街の悪夢』の殺人鬼フレディは、『ハロウィン』(1979)のブギーマン、『13日の金曜日』(1980)のジェイソンとともに、1970~80年代人気を博したホラー映画の代表キャラだった。
ホラー映画は、映画の始まりの頃から存在した。
しかし、ジャンルとして認識されるようになるのは、『カリガリ博士』(1919)『巨人ゴーレム』(1920)『吸血鬼ノスフェラトウ』(1922)といった秀作を生み出したドイツ映画黄金期から。とかく低俗と言われがちなホラー映画だが、ドイツ表現主義の芸術として今も高く評価されている作品陣である。
今年93歳でクリストファー・リーが他界
とは言え、現在にまで続く系譜、ということになれば、1930年代の米国ユニバーサル映画を挙げることになる。
ベラ・ルゴシ演じる『魔人ドラキュラ』(1931)、ボリス・カーロフが怪物となる『フランケンシュタイン』(1931)といったゴシック小説をベースとした代表作をはじめ、狼男、ゾンビといったキャラクターも登場。恐怖をもたらすモンスターたちには、見る者の感情移入する対象となるものも少なくなかった。
1950年代に入ると、SFホラーが数多く製作されるようになる。
そんな『遊星よりの物体X』(1951)の地球外からやってきた生命体や『ボディスナッチャー/恐怖の街』(1956/日本劇場未公開)の人体を乗っ取った「ボディスナッチャー」などは、人類のため退治すべき怪物。冷戦下の米国、「赤狩り」時代の精神性をも代弁していた。
1950年代後半には、英国ハマーフィルムから『フランケンシュタインの逆襲』(1957)が登場。『吸血鬼ドラキュラ』(1958)などゴシックホラーが大量リバイバル生産され、恐怖をもたらす悪は魅惑の存在としても語られた。
そんなドラキュラを演じ、そのセックスアピールで人気となったクリストファー・リーは、今年6月、93歳で他界している。