為替、経済、株式等で困難が続出、打ち出す緊急避難策が、さらに事態を悪化させるという二律背反が中国のシステムを覆い始めている。
これまでの中国に対する絶大な信頼の根源は、当局の圧倒的な統制力、リスク制御能力にあった。経済の合理性や本源的価値がどうであっても、景気の悪化、市場の崩落、投資損失や資産の不良化などの心配は当局のオールマイティーに対する信頼によりカバーされてきた。無謬性を旨とする共産党当局とその影響下にあるメディア、多くのコメンテイターによって、中国に危機など起きるわけがない、との強いコンセンサスが形成されていた。しかし今顕在化した、たたみ重なる二律背反は、当局の制御能力の限界を知らしめ始めている。
元安誘導が引き起こした矛盾
決定的な二律背反は為替であろう。8月11日から13日までの元安誘導は景気悪化に直面している中国経済に対しては、整合的なものであった。中国人民銀行はこれをIMFの勧告に基づいた市場実勢への通貨管理の弾力化であり改革の一環であると説明した。
しかし、市場参加者の大勢は、それは口実であり、経済的要請から元切り下げを余儀なくされたとみている。