以前、こんな話を聞いたことがありました。
「世界の食卓を眺めてみると、大半の国ではおかずが真ん中にあって主食は端の方に置いてある。例えば洋食のランチやディナーでパンがど真ん中に置いてあることはない。ところが日本では、大盛りのご飯がお膳の真ん中に置いてあることも決して珍しくない。なぜか?」というのです。
「ご飯は真ん中」神話
で、その答は、
「それはご飯が必須アミノ酸をすべて含んだ<完全栄養食>だから。ご飯だけ食べていても人間は(栄養のバランスはいまいちだけど)ともかく生きていくことはできる」から、だと言うのですね。
「ところが、パンはアミノ酸の含有率が少なく、それだけ食べていても栄養として不足がある。パンはバターをつけて<バターつきパン>にして、初めて栄養のバランスが取れるので、ディナーテーブルの端の方にバターと並べて置いてあるんだよ」
へぇ・・・と感心させられる話です。すっかりそういうものかと思っていたのですが「微笑栄養素」の話として取り上げようと調べてみたところ、あまり信頼できそうな裏打ちのデータが出てこないのです。
確かにパンのアミノ酸含有率はご飯よりも少ないらしい。しかし、だからといって精白米や玄米が質・量ともにバランスの取れた<完全栄養食>かと問われれば、必ずしもそんなこともなく、前回お話したように小魚一匹のおかずで一升飯がお腹に入らなくなってしまったりもする。
またパンだって、バランスはいまいちかもしれませんが必要な栄養素は含んでいるし、大半が油脂であるバターで必須アミノ酸が補えるかと問われれば、これまた微妙・・・。
といったわけで、どうやら上に記した「ご飯の完全栄養食神話」は、かなり米食に贔屓目で見られた見解であるらしい。
では、贔屓しないとダメなくらい日本食はヘルシーじゃないのか、と問われればそんなことは全くなく、豆腐や醤油が世界に普及したように、欧米型の食生活より明らかに健康面で一歩和食が進んでいるのは、間違いないようなのです。