スイス・チューリッヒ市ディエティコン地区のレクリエーション施設「Chrüzacher」(1994年竣工)は、ペーター・フェッチ氏が手掛けた「アースハウス(earth house、大地の家)」の1つ。奇妙な建築に多額の公費を使うのかと難色を示す住民も多かったが、いまでは憩いの場として愛され、町のシンボルになっている(写真提供:Vetsch Architektur AG、以下特記以外も同様)

 草や土で覆われた曲線の屋根、アーチ型の窓、ツヤツヤ光る壁。まるでメルヘンの世界から飛び出してきたような可愛らしい住居が、スイスの建築家ペーター・フェッチ(Peter Vetsch)氏によって作られている。

 1970年代後半から、地元スイスを中心に諸外国で90以上もこうした家を建ててきた。

 環境保護の意識が世界的に高まる中で、「シンプルな作りで長持ちする家を作りたい」と始めたエコロジカルなプロジェクトは、いまも少しずつ前進している。

独特なデザインと工法で注目を集める

 数年前、日本で自動車のCM*に使われた変わった形の白い家と言ったら、覚えている読者もいるかもしれない。この特徴的な家がフェッチ氏の「アースハウス(earth house、大地の家)」だ。

* https://www.youtube.com/watch?v=UwC8ASimwmw(白い家が登場するCMは5:13から)

 「私自身はすべて把握していませんが、ポスターなどの背景としてよく使われているようですね」とフェッチ氏が言うように、キュートでアートなアースハウスが撮影などに使われることは珍しくない。

 アースハウスは、地中にどっぷり埋もれて住むのではない。屋根を土で覆い、窓のある側が開放されている。「傾斜や起伏のある土地を掘って家を作り、堀った土を捨てずに屋根に被せる」というのが基本のコンセプト。

 その外観は土地と一体化したような雰囲気を醸し出している。土は家の断熱の向上に役立つし、土だけにせずに植物を生やせばCO2削減にもつながる。