先日は、某出版社の営業さんとの打ち合わせ。話題は、現在好調な少女コミックのジャンルに移りました。その要因を尋ねたところ、「カベドン」という耳慣れない単語が返ってきました。
野球マンガは「ドカベン」、ブルース・ウィリス主演の映画は「アルマゲドン」。昼に食べたのは「ウドン」・・・。
なかなか頭の中で「カベドン」という単語が、形を成しません。そんな私に、優しく教えてくれる営業さん。男性でしたので、さすがに実演はしなかったですが(笑)。
「カベドン」は「壁ドン」で、そのシチュエーションが織り込まれているコミックが売れ、映画化もヒットし、相乗効果になっているとのこと。
青春真っ盛りの若い方の他にも、甘酸っぱい想いをしたい方々も多いということなのでしょう。
そこで今回は、手っ取り早く読書で、甘酸っぱい想いを味わうことにしましょう。
自分もマラソンを走っているかのような爽快感
まずは、直球勝負の青春小説から。
『ららのいた夏』(川上健一著、集英社文庫)。
高校球児の小杉純也は、運動会のマラソンで、走ることが大好きな坂本ららと出会います。惹かれあう2人。純也はプロ野球選手になり、ららは将来を嘱望されたランナーに成長します。明るい未来を約束されたはずの2人でしたが、悲しい結末が・・・。
物語を通して登場人物があまり多くなかったり、弱小高校野球部の純也がプロ野球選手になったりと、状況設定もあまりリアルではありません。そのため、物語を通して物足りなさを感じる方もいるかと思います。ただその構成によって、物語がシンプルになり、2人の真っ直ぐな恋心を強調させることに成功させました。
物語の半分近くはマラソンのシーン。読み進めていくうちに、自分もららと一緒に走っているかのような錯覚に陥ります。この爽快感も本書の魅力の1つです。