「ぼくたち、大人になってもこんな冒険ができるかなあ」
先日のゴールデンウィーク、我が家も隣県の動物園に出かけました。運転はもちろん私。そういえばここ数年、こうした家族旅行か、出張でしか遠出していないなぁ、とハンドルを握りながら、ふと頭に思い浮かんだのがこのセリフでした。
前夜に子どもたちと見た、録画していたドラえもんの映画のワンシーン。お馴染みの仲間たちとの心躍る冒険が終わり、夕焼け空をみながらのび太がつぶやきました。子ども心を忘れない大人になりたい、という意味が込められているのでしょう。
確かに、大人になると、予定も組まず、自由気ままに冒険はおろか旅行するのも難しくなってきます。それでも、やはり見知らぬ世界を求める好奇心は忘れたくないもの。そこで今回は、冒険の世界へ誘う小説を紹介してみようと思います。
昭和15年、2機のゼロ戦がベルリンを目指した
まずは、見果てぬ地を目指す冒険から始めてみましょうか。
『ベルリン飛行指令』(佐々木譲著、新潮文庫)。
太平洋戦争の足音が聞こえ始めた昭和15年。日独伊三国同盟を盾に、ドイツは日本にゼロ戦本体の技術供与を求めてきます。そのため、腕は確かなのに、型破りな性格から厄介者扱いされている安藤啓一海軍大尉、乾恭平一空曹の2人に密令が下されます。ゼロ戦を操り、アジアから中東を横断しながらベルリンに向かえ、というその指令は、誰もが不可能に思えたものでした・・・。
行く先々でのイギリス空軍との遭遇や死闘、中継場所の植民地の動向、ゼロ戦本体の思わぬトラブルなど、様々なアクシデントを乗り超えながらベルリンを目指す2機のゼロ戦。まさに冒険小説の王道と言えます。