無線LANなどでネットに接続し、本体をテレビとつなぐことで、映画やテレビ番組などのコンテンツを大画面で楽しめる「アップルTV(Apple TV)」―― 米アップルが9月1日に発表したその新型モデルは、概ね欧米メディアの事前報道通りの内容だった。
価格は従来モデルの229ドルから大きく下げて99ドルとし、同社が初めて開始するコンテンツのレンタルサービスは、テレビ番組の場合で1話99セント、映画は1本4.99ドルとなる。
レンタル開始から視聴を始めるまでの有効期間は30日で、視聴開始から48時間以内であれば何度でも見ることができる。
レンタルの対象となる映画タイトルは当初約7000本を用意し、そのうち3400本はHD(高精細)画質。作品はDVDの発売と同時に解禁されるという。
本体は9月にも米国で出荷を開始するが、日本での発売は未定。またコンテンツのレンタルサービスは当初、米国のほか、カナダ、英国、フランス、ドイツ、オーストラリアなど6カ国で始める予定だ。
テレビ局は「実験段階」と慎重姿勢
アップルがアップルTVを発売したのは2007年。携帯音楽プレーヤーの「アイポッド(iPod)」と有料音楽配信サービス「アイチューンズ・ストア(iTunes Store)」で成功を収めた同社が、今度は家庭のテレビの領域に進出すると話題を呼んだ。
しかし、その売れ行きは期待外れ。あとになって「(アップルTVは)スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)の道楽商品だ」と揶揄されることになった。
米国ではケーブルテレビ事業者が、長期サービス契約の見返りにセットトップボックスを安価で提供していること、ケーブル事業者のビジネスが脅かされると懸念するメディア企業がデジタル配信に消極的なことなどが理由とされている。
アップルは今回の新型機と新たなレンタルサービスでテレビ分野に再挑戦することになるが、その効果は限定的だと米ウォールストリート・ジャーナルは報じている。
このレンタルサービスにコンテンツを提供するテレビ局は今のところ、米4大ネットワークのフォックステレビとABC放送、そしてケーブルチャンネルのABCファミリー、ディズニーチャンネル、BBCアメリカだけ。
ジョブズCEOは、チャンネルは今後増えていくと話しているが、4大ネットワークのNBCユニバーサルやCBS、そしてケーブルテレビを持つタイム・ワーナーは既にアップルの提案を断っており、現時点でアップルと契約する計画はないと各社の関係者は話している。
また今回コンテンツを提供することになったフォックステレビや、ABC放送の親会社であるウォルト・ディズニーも、あくまでも短期的な実験だと述べている。