それに加え、大きな不安要因は物価が低下傾向にあることだ。米消費者物価指数(食品・エネルギーを除く)の前年比上昇率は1%を割り込み始めている。
2010年8月27日、米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた会合で、バーナンキFRB議長は「デフレは大きなリスクではない」と強調したものの、市場関係者の間では「日本と同様にデフレになる」(先の外資系証券)との懸念が強い。大手銀行の債券担当者は「米金利の動きは典型的なデフレパターンであり、今後も低下傾向を続けるだろう」と予想する。
介入に踏み切っても、「空回り」が発生する恐れも
厄介なことに、米金利低下は介入の効き目を弱めてしまう可能性がある。
からくりはこうだ。日本の財務省が円売り・ドル買いを実施すると、買ったドルは何らかの形で運用する必要がある。一般的にそれは米国債になる。つまり、介入すると日本が米国債を買うことになり、米金利の低下を促してしまう。そうなると、ドル安・円高の要因とされる「日米金利差の縮小」を日本自らが招きかねない。
為替相場は金利差だけで必ずしも決まらない。だが、市場で金利差重視の相場が続いている限り、介入に伴う金利差縮小が更なるドル売り・円買いを誘う。何とも不思議だが、介入の「空回り」が発生する恐れがあるのだ。
それなら、介入で得たドル資金で米国債を買わず、「現金」にしておくのはどうか。一見良さそうなアイデアだが、大量のドル紙幣を保管するのは非現実的。このため、「現金」は民間金融機関に預金することになる。いわゆる「MOF預託」と称されるものだ。
この場合でも、預金を受け入れた金融機関はそれを運用する必要がある。米国市場も最近は運用難だから、米国債で運用するしかない。やはり金利は下がってしまうのだ。
市場関係者は「もし大量介入で米金利が低下する状況が続けば、最終的に日米金利差がなくなり、円高圧力だけが残されるかもしれない」(生保の外債運用担当者)と懸念する。
外為市場の反応次第で、日銀はFRBに「自動追随」?
日銀は「TOKYO連銀」になってしまうのか?(参考写真)〔AFPBB News〕
もとより、単独介入の効果など知れたもの。「介入が効かない」となれば、日銀に対して一段の金融緩和を求める圧力が高まる。外国為替市場の反応次第だが、今後も日銀がFRBの緩和措置に「自動追随」していく可能性もあるだろう。いっそのこと、金融政策決定会合の日程をFOMCに合わせれば、「TOKYO連銀」は完璧になる。
こうした隷属から日銀が解放されるのはいつだろうか。

