中国のアジア・中東方面の外交が活発化している。
その中核となるのは、中国を中心に現代版シルクロードの構築を目指す「一帯一路」と呼ばれる構想だ。
一帯一路構想は2013年頃から提唱され始めた新しい概念で、中国から中央アジアを経由して欧州にいたる陸路を「シルクロード経済帯」(一帯)とし、中国から東南アジア、インド、アフリカ、中東を経て欧州に至る海路を「21世紀海上シルクロード」(一路)と名付け、この地域を包括する経済共同体の構築を目指す構想である。
あまりにも壮大なため荒唐無稽な話にも聞こえ、当初は中国の雑多な動きを包括的に説明するアドバルーン的な構想に思われていたのだが、2014年11月に北京で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が一帯一路構想の実現に向けて独自に400億ドル(約4兆5800億円)の基金を創設し、対象地域のインフラ整備を支援すると表明したことから、急速に構想の現実味が増してきた。
一帯一路構想の3つのメリット
一般に「一帯一路構想」の推進による中国のメリットは、(1)国内の過剰生産構造の解消、(2)新たな資源ルートの確保、(3)発展が遅れる内陸地域の再開発、の3点にあると考えられている。
第1点目の「過剰生産構造」についてだが、中国の製造業は生産能力が過剰なため軒並み稼働率が低下しており、深刻な状況にある。国内の賃金上昇や東アジア諸国の工業が起ちあがってきたこともあり、もはや主要市場である米国、欧州、日本向けの生産拡大は望めない。そこで一帯一路構想では将来的な成長が望める未開拓地域のインフラ整備を進め、新たな市場を開拓することを目指しているわけである。
続いて「新たな資源ルートの確保」についてだが、中国は21世紀に入り急速に資源輸出国から資源輸入国へと転換し、石炭はオーストラリアやインドネシアに、原油は中東に依存している。原油の輸入にあたってはマラッカ海峡を通らざるを得ず、また石炭の輸入にあたって太平洋を通らざるを得ない。しかしながらこの2つの海路は中国の管理下になく、エネルギー安全保障上の問題を抱えることになっている。この点、一帯一路構想の実現により石炭を代替する天然ガスの輸入の陸上通路が拡大し、また海運通路の多様化が実現すれば中国の資源安全保障環境は大きく改善する。