「ストーリーを語る」「伝えるメッセージは1つに絞る」――これは広告のセオリーである。
「お客様」という人に向けて、「購入」という方向に動いてもらうために、企業は広告というメッセージを発信し続ける。その経験や分析から得た知見として、効果的に消費行動に結びつけるために上記のようなセオリーが生まれている。
人間はストーリーに興味を覚え、ストーリーを伴う情報を脳は重要情報だと認識する傾向がある。また、受け取った情報が多ければ多いほど、個々の情報に対する意識は薄れる。
そのため、人を動かすには、弱いメッセージを複数伝えるよりも、1つの強いメッセージをストーリーと共に伝えるのが効果的である。
経営の目的は経営者が描く将来のビジョンと現状のギャップを埋め、将来のビジョンを効果的かつ効率的に実現できるように人を動かすことである。そのため、各種戦略や制度の設計はこの観点から行われる必要がある。
そして、経営の根幹をなす「人」を扱う人事に関しては、従業員という「人」が将来のビジョンの実現に向けて動くように効果的なメッセージを発信しなければならない。
人を動かすメッセージを発信する、これは広告も人事も相通ずるものがある。
人事評価制度の見落とされがちな役割
この時期になると人事に関する相談が多くなる。採用、教育、評価、昇進、昇給、組織構成・・・。
中小企業においては組織制度が未整備の状況にあることも多々あり、新たに人事に関する制度を作っていくお手伝いをすることもある。また、これまで運用していた人事評価制度を見直したいというご相談もある。
人事評価制度の機能は大きく2つに分けられる。1つは給与・賞与や昇進等、従業員の処遇を行うことを目的として、ある一定期間における能力、業績、貢献度などを把握し、数値化する考課・査定の機能。
そしてもう1つは、企業を発展・成長させるための人材を育成する機能である。
将来のビジョンを効果的かつ効率的に実現するという経営の目的を考えた場合、特に後者の人材育成の機能は極めて重要な要素となる。