創業4年でナスダック上場にまで漕ぎつけた、モバイルゲーム会社のiDreamSky。その急成長の背景には、「海亀」と「草根」と呼ばれる両極端なマネジメントの「組み合わせの妙」がありました。
前回の『ウォール街を沸かせた中国のモバイルゲーム会社』に続く後編では、この中国における2つの典型的なマネジメント像を手がかりに、「成長市場で成功する組織の要諦」を探ります。
急拡大する市場で事業・組織を立ち上げるには、どういったタイプの人間が、どれだけ本気でやらないといけないか。この点は日本企業にも多くの学びがあることでしょう。
数千の機種、数百のチャネル対応を粛々とこなす「誠実さ」
DI 板谷:前回は、iDreamSkyが「海外モバイルゲームのマネジメント」(ローカライズ・運営・パブリッシュ)というユニークなビジネスにいち早く参入して急成長したこと、その中で、香港人で海外向け営業力も高い共同創業者のジェフが果たしてきた役割について、議論してきました。
今回は、叩き上げの中国大陸育ちであるCEOのマイケルが果たした役割にも踏み込みつつ、急成長を支えたマネジメント陣・組織のあり方について、掘り下げていきたいと思います。
LC 朴:Half Brick(Fruits Ninjaのスタジオ)との15分の電話会議のアポに際し、オーストラリアまで飛んで相手を驚かせたジェフのエピソードは非常に印象的ですし、iDreamSkyにとって重要な突破口となりました。
ただ、中国企業への不信感というビハインドもある中で、相手の「虎の子」であるソースコードを入手するまでに至るのには、相当な信頼の積み重ねが必要でした。
DI 板谷:そこでCEOのマイケルの出番という訳ですが、彼は具体的にはどのような役割を果たしてきたのでしょうか?
LC 朴:マイケルが行ったのは、とにかく中国現地に根差したノウハウ・ネットワークを総動員して、(1)機種対応・ローカライズ、(2)チャネルマネジメント、(3)マーケティング、それぞれにおいて、誠実に対応を続けていったことに尽きます。
DI 板谷:前回冒頭でも「中国市場の特殊性とiDreamSkyの対応」としてユニークな点を表にまとめました。改めて詳細を深掘りして参りましょう。
LC 朴:まず、(1)機種対応・ローカライズです。欧米・日本といった「通常の」エリアであれば、「iOS=Apple」、「Android=サムスン中心に大手数社への対応」、で済むはずです。
しかし、板谷さんはよくご存じだと思いますが、中国では状況が全く異なります。同じAndroidの中でも、山寨(シャンザイ)と呼ばれる、500〜800元程度で手に入る2~3流の格安メーカー品が溢れています。