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 全国試験で広東省1位、北京大学卒、米国系投資銀行出身・・・。

 2つ目のケーススタディでは、そんな「現代中国のエリート像」を体現するCEOがベンチャー市場に見出した可能性と、現地ならではのチャレンジに迫ります。

サクセスストーリーの裏にある中国市場ならではの構造的課題

 前回、前々回のケーススタディ(1)では、「徹底した差別化が重要」ということに加え、「オフラインが未熟な産業に、オンラインの機会が多く存在する」ということをお伝えしました。

 広告・マーケティングの世界も、この傾向が最も顕著に表れている分野の1つです。

 中国のオンライン広告市場は、既に足元でオフライン広告市場(テレビ・ラジオ・紙媒体)を追い抜いたと言われています。

 さらに驚くべきは、中国におけるオンライン広告の構成比・絶対額は共に、既に日本を凌駕するレベルに達しています(このたった1つの事実からも、日系企業は、日本市場と同じオフライン中心の感覚でいては不十分だと分かります)。

 こうした中、中国ソーシャルメディア市場の立ち上がりにいち早く注目し、北米発ビジネスモデルのタイムマシン経営に挑戦しているのが、Social Touch社です。

 同社は現在、企業向けにWeibo(中国版Twitter)上でのアカウントマネジメント・マーケティング代行*1を展開しており、登録会員6億人超・月間アクティブユーザー1.3億人(2014年時点)という、Weibo自身の爆発的成長の恩恵も受けながら、急成長を遂げています。

 そして、事業立ち上げから4年足らずにして、P&G中国の19ブランドをはじめ、国内外の多くの大手ブランド広告主を顧客に持つに至っています。

 そんな同社の最大の特徴の1つは、何と言っても、輝かしすぎるキャリアを持つ創業者の張鋭(Zhang Rui)CEOでしょう。「全国試験で広東省1位」「北京大学卒」「米国系投資銀行に新卒入社」という、現代中国におけるエリート像を地で行く、新進気鋭の若手経営者です。

 このように、一見すると、華々しいサクセスストーリーを歩んでいる同社。しかし、実は背後に中国市場ならではの構造的課題があり、ベンチマークとしてきた北米型モデルの実現はまだ道半ば、だと言います。

 そこで、今回のケーススタディでは、中国若手エリートが北米発ビジネスモデルを自国に持ち込もうとした際の、苦難とブレークスルーの軌跡にフォーカスして参りたいと思います。

 そして、それらは、私たち日系企業に対しても、「中国・アジア市場に先進国発ビジネスモデルを輸出する際に、一体何に気を付けるべきか?」ということについて、必ずや貴重なヒントを与えてくれることでしょう。

*1 企業アカウントの管理、ユーザー動向の分析、プロモーションの企画、情報発信、自社Webサイトとの連携、等。