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30兆円の時価総額を記録し、世界を震撼させたアリババ。しかし、中国にはこうした総合型ECだけでなく、知る人ぞ知る「特化型EC」の優良成長企業も多数存在しています。
今回はそのパイオニアとも言える21cakeを題材に、「1つの製品に集中して、中国市場を効果的に攻略する方法」を考えていきます。
中国消費市場拡大を背景に急成長中の「21Cake」
中国経済の成長とともに、中流層の可処分所得水準が増え、消費市場が急速に拡大しています。大都市のデパートでは、至る所で、ルイヴィトン、フェラガモ、グッチのような欧州の高級ブランド製品を目にすることができます。
2011年に株式公開したプラダが上場先として選んだのも、欧州でもなく米国でもなく、中国・アジアへの玄関口としての香港でした。
同時に、インターネット・モバイル産業の発展も目覚ましく、昨夏(2014年)に米国上場したアリババ集団のEC流通額は、既にアマゾン(Amazon)とイーベイ(Ebay)の流通総額を凌駕するに至っています。
7つのケーススタディの1社目として取り上げたいのは、このような中国の消費市場拡大を背景に急成長を遂げている、オンラインケーキメーカー「21Cake」です。
2004年創業の同社は、ケーキをオンラインで販売するEC企業。信じ難いことに、毎日何千個ものケーキを自社ECサイトを介し、中国の大都市(北京、上海、天津、杭州、蘇州、無錫、広州、深セン)で受注生産、自社配送の形で販売しています。
そして、もう1つの大きな特徴が、ハイエンド市場への徹底したこだわりです。
取り扱うケーキは168〜398元(約3000〜7000円)ですから、物価水準を考慮すると、日本では1万円前後に相当する計算です。お世辞にも手頃な価格とは言えません。しかし、リピート率は8割にも達し、「質の良いものには相応の対価を払う」中所得者層を惹きつけてやみません。
現在、多くの日系企業が、ハイエンド市場を突破口に、中国・アジア市場に切り込もうとしています。
そのような中、現地企業でありながら、ストイックなまでに「特化」「差別化」を追い求め、成功を収めている同社は、ケーススタディのトップバッターを飾る存在として相応しいと言えるでしょう。
「ハイエンド一点突破モデル」の格好のベンチマーク
ドリームインキュベータ 板谷俊輔(以下、DI 板谷):7社のケーススタディのトップバッターは、21cakeです。
Legend Capital 朴焌成(以下、LC 朴):21cakeはケーキのオンライン販売の会社ですが、非常にユニークな特徴が多くあります。
弊社は2009年9月に投資をしていますので、その立場からも、同社の魅力や成長の軌跡について、お話しできると思います。