先月下旬、27年ぶりに台北を訪問した。滞在した正味2日半の間に垣間見た街全体の印象は、北京や上海の中心街のような派手さはないが、日本に近い雰囲気の、落ち着いた先進国の市街地だった。

日本と台湾の共通性

台北市街と地上101階建ての超高層ビル「台北101」(ウィキペディアより)

 日本と中国の間を毎年数回往来している私にとって、外観はとくに目新しい印象はなかった。しかし、建物の細部の仕上げの様子を見た時、また、ホテルやレストランのサービスに接した時、中国との大きな違いに気が付いた。

 今回台北で宿泊したホテルは観光客用の比較的小さなホテルで、台北に駐在しているビジネスマンの友人たちも名前を知らない、オフィス街の中心部から少し離れたところにある、中級のホテルだった。

 ホテルの内装は高級でも新しいものでもなかったが、室内の塗装などの仕上げを見ると、日本のホテルやオフィスと同じように手を抜かない几帳面な仕事ぶりが目に付いた。

 バス・トイレの水回りを見ても、中国や米国のホテルでは、もう少しグレードの高いビジネス用のシティホテルですら水の出が悪かったり、バスタブの排水が詰まり気味だったりということはしばしばである。ましてやウォシュレットは見たことがない。

 これに対して、今回宿泊した台湾の中級ホテルは水回りも日本国内のホテル並みに快適で、ウォシュレットまでついていたのでびっくりした。

 また、商店で買い物をしても、レストランで食事をしても、どこの店員もサービスが丁寧で親切だった。タクシーも清潔で、運転手のマナーも日本と変わらなかった。

 短い滞在だったため、十分なサンプルとは言えない面もあると思うが、総じて日本に非常に近い感覚でモノづくりやサービスが行われている印象をしばしば受けた。派手さはないが、何事にも手を抜かず、行き届いた心配りできちんとしているという点が日本との共通性を強く感じさせた。

 日常的にこのような製品・サービス水準を追及しているという点は中国とも米国とも異なる。こうした日本的な感覚を共有する台湾の企業や人々であれば、日本企業の製品・サービスの質の追求へのこだわりを十分理解できるはずである。そこから相互理解と相互信頼も生まれやすい。

 その意味で、日本企業が海外でビジネスを展開する時、台湾企業は良きパートナーになるのではないかと感じた。