帝国データバンクが実施した海外進出に関する調査の結果が発表された。調査対象は全国2万3561社で有効回答企業数は1万968社(回答率46.6%)。詳細は、こちらに掲載されている。

海外事業からの撤退・撤退検討の経験がある日本企業は4割

 直接的な海外進出が「ある」と回答した企業1611社(全体比14.7%)のうち、「撤退は考えていない」とする企業が907社(56.3%)である一方、「撤退または撤退の検討あり」と回答した会社は635社(39.4%)であった。

 さらに、撤退または撤退検討時に直面した課題については、645社(複数回答)の回答は、「資金回収が困難」(38.3%)、「現地従業員の処遇」(31.8%)、「法制度・会計制度・行政手続き」(29.5%)、「為替レート」(26.5%)が上位となった。

 最近、ジェトロや地方自治体が中小企業の海外進出を積極的に応援している一方で、日本企業の4割が撤退又は撤退検討の経験ありというのは多いようにも見えるが、アジア現地にいる者にとっては、その程度だろうという感覚はある。

 今、なぜ海外進出している日本企業の一部が撤退に追い込まれ、あるいは追い込まれようとしているのか、日本企業の集積が進むアジア地域を中心に考えたい。

海外進出の検討段階における罠

 経営者が海外進出に踏み切るのは、現状のままでいることのリスクが海外進出するリスクよりも大きいと認識したときだ。つまり、経営リスク回避行動という側面がある。

 そして、海外直接投資の機会を認識した企業が投資を実行するか否かは、受容せざるを得ない海外進出リスクの程度、つまりそのリスクの源泉となっている「不確実性」をいかに評価するかにかかっている。

 ところが、海外事業経験が乏しい経営者が海外事業の「不確実性」を評価することは容易ではない。

 不確実でわからないのであれば経営判断しないというのが理にかなっているのだが、近年は、海外進出が企業の生死を決めるといった風潮、海外進出を助長する報道や視察会・セミナーによって、漠然とした不安感や日本から海外への進出論一辺倒で社会の雰囲気ができあがってしまっているようだ。

 東日本大震災後の「六重苦」(円高、高い法人税、自由貿易協定遅延、労働規制強化、温暖化規制強化、電力不安)も日本企業の海外進出を加速させてきた。

 よくわからない海外での事業の場合、経営者の個人的な経験や人脈、第六感、先行事例、顧客企業への追従、競合他社の後追い(群集心理)等によって経営判断がなされる。ただ、そうした判断はブレも大きい。