劣悪な漂流密航船内の写真、乗船のシリア難民が撮影

ブルースカイM号の船内でひしめき合う人々 ©AFP/HO/COURTESY OF SYRIAN MIGRANTS〔AFPBB News〕

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 船長によれば、嵐を避けるため船をコルフ島の近くに避難させていたとき、ギリシャの港湾警察から無線が入った。しかし、船長が「何も異常はない」と言ったら、嵐にもかかわらず、すぐにイタリア方面に進路を取るように促されたという。

 いずれが正しいにせよ、このニュースにドイツ人を始め、EUの住人はメチャクチャ腹を立てた。貨物船が768人もの人間を積んでいたのに、何も異常はなかったとするのは、ギリシャの警察が密航あっせんの犯罪組織とグルになっているとしか考えられない。

 ギリシャは賄賂の横行する国として名高いが、経済の破綻でこれだけEUの他の国に迷惑をかけ、援助を受けているのだから、少しは規律が締まってきたかと思っていたのに、「何も変わっていないではないか!」

押し寄せる難民を助けざるを得ないイタリア

 ところが、厄介はこれだけでは終わらなかった。そのあくる日の元旦、イタリアの沿岸警備隊にまた通報があった。今度はシエラレオネ船籍の「Ezaleen」号が、難民450人(実際は360人だった)を乗せたまま、イオニア海で漂流しているという。難民の1人が、船員が逃走したとSOSを発信したらしい。

 スカイブルーM号とは違い、Ezadeen号は動いていなかった。燃料切れか、故障かはわからないが、まるで幽霊船のようにただ流されていた。同船は3日の日、イタリア沿岸警備隊の手によって、ようやくカラブリア州(長靴の先っぽ)の港に到達した。

 この立て続けに起こった2件の遭難騒ぎで、EUの難民問題は新たな局面を迎えた。船でアフリカからやってくる難民は、今までもほぼ全員、密航をあっせんする違法業者によって、危険な船で危険な海に送り出されてきたが、その手法が急激に変わったことが確認されたのだ。

 これまでは主に、漁船や、大きなゴムボートが使われていたが、まず、去年の秋ごろより船が巨大化した。

 今回のスカイブルーM号もEzaleen号も、築4、50年のボロ船で、しかもEzaleen号は家畜運搬用の船だったが、ともあれ、今までは、リビアからイタリア領としては最短のランベドゥーサ島へ向かうぐらいしかできなかった難民船が、シリアからイタリアへ直接人を運べるようになった。

 しかも、一度に何百人も積めるのだから収入が莫大。そのうえ、冬でも航行が可能だ。1人5000ユーロというのは、東京ドイツ間のビジネスクラス往復の飛行機代よりも高い。いまや巨大ビジネスだ。

 そこで、たいていのあっせん業者は、沖合に出たところで、自分たちだけ小型のモーターボートなどで逃走し、遭難のSOSを出し、あとはイタリア海軍に救助させるという方法を取るようになった。