中国はこの空母をはじめとするハードパワーの強化のみならずソフトパワーでの攻勢を仕掛けようとしている(写真:米国海軍協会)

 「2015年は中国がハードパワーのみならずソフトパワーでの東シナ海への攻勢を強めることが必至である」

 昨年暮れから2015年冒頭にかけて、アメリカ軍関係者やシンクタンク関係者などの間で何かと取り沙汰されている中国関係の話題である。

物議をかもしている“提言”

 とりわけ昨年12月に、アメリカ・日本・中国の学者によって提案された「大局的に見れば、日中両国は尖閣/釣魚島を巡ってこれ以上対立を続けるべきではなく、両国ともある程度の妥協をして島嶼をめぐる対立に終止符を打つべきである」という提言に対する議論が年越しで盛り上がっている(提言は12月初頭の「ロサンゼルス・タイムズ」が初出。多くの批判が寄せられ、12月末には著者の1人が「ナショナル・インタレスト」誌上で批判への反論を試みた)。

 この提言の骨子は、以下のように2つの案あるいは段階から成る。

第1案あるいは第1段階:棚上げ案

 日中両国は尖閣諸島の領有権をめぐる互いの主張に異議を唱えるのを中止するとともに、島嶼の利用、管轄権の行使、監視なども差し控える。要するに、しばらくの期間、尖閣諸島問題は「凍結」あるいは「棚上げ」状態にすることによりこの問題をめぐる両国の対立を冷却して解決策を模索する。

第2案あるいは第2段階:より具体的な解決案

 日中両国はそれぞれの尖閣諸島に関する領有権の主張の存在を認め合うが、中国は国際法的に尖閣諸島が日本の施政権下にあることを認める。ただし、尖閣諸島に対する監視やパトロールや安全確保といった具体的な施政権の行使は、日中両国が共同であるいは合意のもとに実施する。そして、尖閣諸島をめぐる領域問題と尖閣諸島周辺海域や海底を含んだ東シナ海での経済的権益をめぐる交渉とは完全に分離する。最後に、そして何よりも重要なことは、日中両国はこれ以上の新たな領域紛争を将来にわたって持ち出さない。