念のために改めて簡単に紹介しておこう。

 ヨン氏はフリーの記者として2003年から米軍のイラク介入の前線に長期滞在し、迫真の報道と論評で声価を上げた。2008年頃からはアフガニスタンでも同様に活動し、米国内での知名度をさらに高めた。ヨン氏のレポートは「ウォールストリート・ジャーナル」「ニューヨーク・タイムズ」や多数の雑誌に掲載され、大手テレビ各局でも放映された。『イラクの真実の時』という著書は全米ベストセラーとなり話題を集めた。

 それほど著名な米国人ジャーナリストが日本の慰安婦問題の調査・取材に本格的に取り組み、「米欧大手メディアの『日本軍が組織的に女性を強制連行して性的奴隷にした』という主張は作り話だ」と明確に主張するのだ。そして、「慰安婦問題での日本糾弾は特定の政治勢力による日本叩きだ」とまで断言する。

 ヨン氏の主張の有力な根拠の1つとなったのが、このIWG報告である。IWG報告の基礎となる調査自体は2000年に本格的に始まった。

 この調査はクリントン政権時代に成立した「1998年ナチス戦争犯罪開示法」と「2000年日本帝国政府開示法」という2つの法律に基づいて行われた。目的は第2次大戦での戦争犯罪の情報開示を徹底させることにあった。

 調査は国防総省、国務省、中央情報局(CIA)、連邦捜査局(FBI)、国家安全保障局、米軍当局など、戦争に関わったすべての主要組織に、未公開の公式文書を改めて点検し、ドイツと日本の戦争犯罪に関する書類を発見して公開することを指示していた。

 本来はドイツを主対象とした調査だったが、後から日本も含まれた。その過程では在米の中国系政治組織である「世界抗日戦争史実維護連合会」(以下「抗日連合会」)が動き、日本も調査の対象に含めることを米国の政府や議会に強く要請したことが明らかとなっている。