(3)オバマ政権に対しては、国家の秩序、社会の秩序を維持することの重要性を深く認識していないのではないかという疑問がある。

 ヘーゲル長官が辞任を発表したと同時期に米国のファーガソンにおいて暴動が起こった、黒人少年を射殺した白人警官の不起訴が決定したことに誘発された暴動である。国内の治安を維持する必要性を再認識した米国人は多かったと思う。

 筆者が疑問に思うのは国内の治安維持のために不可避的に成立したタイの軍事政権やエジプトの軍事政権に対するオバマ政権の不適切な批判である。

 米国の批判ゆえに両国政府は米国を離れ、中国やロシアの側に立つ可能性がある。各国には各国の事情があり、国内の治安を維持するための行動があることを認め、クーデターによる軍事政権であると言うだけでお節介な批判をしないことである。自らの価値観の押しつけこそ米国は慎むべきである。

今後2年間のオバマ政権に対する我が国の対処法

 オバマ大統領の任期はあと2年間であるが、この2年間において起こるであろうグローバルな諸問題に対してオバマ政権は適切に対応できるであろうか。もちろんグローバルな諸問題に対しては当事者自らがその解決に向けて全力で対処しなければいけないが、米国に期待される役割や責任も大きいのである。

 しかし、ライス氏を中心とするオバマ側近グループが今後2年間、安全保障を取り仕切ることになるので、この分野において多くは期待できないであろう。

 そして、ヘーゲル氏の後継が誰になるにしろ、過去3人の国防長官が味わったと同じ困難を味わうことになるであろう。

 特にイスラム国への対処、「中華民族の偉大なる復興」を目指す中国への対処、ロシアのプーチン大統領の他国侵略には毅然とした態度で臨んでもらいたいものであるが、過去6年間のオバマ政権の対処を振り返ると、多くを期待することはできず、大きな紛争が起こらないことを願うだけである。

 我が国にとって今後、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)、日米防衛協力ガイドラインなど多くの日米間の課題があるが、日本の国益を中心として主体的に粘り強く日米交渉に当たってもらいたいと思う。

 必要であれば、米国の次期政権の誕生を待って交渉するくらいの覚悟が必要である。焦って日米合意を追求する必要はない。