先月の本コラム(「米軍も取らざるを得ない『弱者の戦略』、早急に必要な中国のA2/AD戦略への対抗策」)で紹介したように、中国海軍の対米「A2/AD」(接近阻止・領域拒否)戦略に対抗するためには、アメリカ自身も対中A2/AD戦略を練って、できれば同盟国・友好国を巻き込んでその戦略を実施していかねばならない状況に立ち至っている。そこでアメリカ軍事専門家の間からは、対中A2/AD戦略やそれを実施するための様々な作戦構想などが浮上してきている。
陸軍も含めた第1列島線への接近阻止構想
このような流れの中で、先月、アメリカ連邦議会下院軍事委員会のフォーブス議員は、「中国海軍をいわゆる第1列島線に接近させないための具体的な軍備態勢を、アメリカが主導して構築していくべきである」という書簡を米陸軍参謀総長オディエルノ大将に送った。
ここで注目すべきなのは、海軍戦力小委員会に所属しているフォーブス議員が、対中戦略構想に関する陸軍の態勢をオディエルノ陸軍参謀総長に打診した点である。
中国の対米A2/AD戦略は海軍力と航空戦力、それに各種ミサイル戦力が主役である。そのため、これまで中国に対抗すべくアメリカ軍が編み出した「ASB」(エアシーバトル)作戦概念にしても、現在構築が急がれている対中A2/AD戦略にしても、海軍力と空軍力が中心となるのは当然と考えられてきた。しかし、「海軍力と空軍力に加えて陸軍力も大きな役割を果たすことになる」という対中接近阻止の発想が持ち上がっており、それに立脚してフォーブス議員はオディエルノ陸軍大将に陸軍の準備態勢を問うたのだ。
フォーブス議員たちが推し進めようと考えている対中A2/AD戦略は、中国海軍や航空戦力が第1列島線へ接近することを阻止する構想である。これは米軍関係国防シンクタンクが提言しており、それに対中軍事政策に関わる連邦議員たちが着目したわけだ。