ベルサイユ宮殿にいま、日本の菊が咲いている。それも、一株から数百輪の花を一斉に咲かせる「大作り(おおづくり)」という特別な仕立てで、幅3.6メートルもある菊が、グラン・トリアノンの正面で威風堂々とした姿を見せている。

 そもそもこれは日本の環境省とベルサイユ宮殿の協力事業として始まったプロジェクトのひとつ。2012年(平成24年)3月、東北支援・日仏文化交流事業「フランスからの贈りもの」として新宿御苑で行われたイベントに始まり、2年半の時を経て今回のベルサイユの菊となった。

菊「大作り」。幅3.6メートル、一株から409輪の花が一斉に開花。これが2点一対になってベルサイユ宮殿、グラン・トリアノンの正面を飾っている(撮影:筆者、以下特記のないものは同様)

日仏の庭師の協力で華やかに開花した「プリンセス」

 一般公開(11月1日〜15日)に先がけて、10月31日、ベルサイユ宮殿のプレジデントらがテープカットならぬ、菊で特別につくった花づなをカット。華々しくオープニングを飾った。

 秋晴れのもと、和やかな雰囲気のなかで行われたこのお披露目会。菊に次いでひときわ注目を集めていたのが、日本からやってきた庭師たち。藍染めの半纏、背中に大きく菊を染め抜いた法被がなんとも粋である。

 「無事にこの日を迎えられて、ほっとしています」と語るのは、新宿御苑の菊のエキスパート、山田光一(やまだ・みつかず)さん。

 「万全の体制で望みましたが、日本とフランスでは気候が違うので、枯らしてはならないと心配しました。日本を出発したときには、つぼみが豆粒よりも小さいものでした」

グラン・トリアノンの正面、菊でつくられた花づなをカットするベルサイユ宮殿のプレジデント、カトリーヌ・ペゴー女史
ベルサイユの「大作り」を成功させた日仏の庭師。右端はベルサイユ宮殿の庭師アラン・ガルシアさん、右から2人目が新宿御苑の山田光一さん