中国の明日は誰も予測できない。中国の政治、経済と社会に関する予測は、街頭の占い師の占いと大差はない。なぜなら中国人の本音はまったく見えてこないからである。中国共産党幹部の多くは私的な対話では民主化を支持するというが、公の場では一党独裁の支持を強調する。
北京で「中国共産党第18期中央委員会第4回全体会議」(四中全会)が開かれ、法治の強化が決議されたと言われている。しかし張思之氏は、中国社会の法治は明らかに後退していると指摘する。張氏はかつて毛沢東夫人の江青女史の裁判で弁護を務めた著名な弁護士である。
中国社会で自由、民主と人権といった「普世価値」(世の中の普遍的価値)はすでにコンセンサスになっている。しかし、こうした普世価値は「共産党の指導体制を脅かす」として公の場では論ずることが許されない。自由、民主、人権でさえタブーとされるならば、どのようにして法治を強化するというのだろうか。
「お金は万能」という北京政府の錯覚
10月に講演のために香港に行ってきた。宿泊したホテルの近くの幹線道路の一部は学生によって占拠されていた。意外なことに、学生の抗議行動は静かで平和だった。よく見たら、学生たちはテントのなかで勉強していた。バリケードのあちらこちらで「我要真普選」(わたしは真の普通選挙を希望する)のビラが貼られていた。
香港の市民に話を聞くと、「民主化には賛成するが、道路占拠には反対する」との答えが帰ってきた。香港の大物の芸能人の多くは、学生の「占拠」運動を支持すると表明。その代表者はなんといっても周潤発(チョウ・ユンファ)である。一方、学生の「占拠」運動に反対を表明しているのは日本でも有名な成龍(ジャッキー・チェン)である。ジャッキーは以前も共産党の映画審査制度が必要であると主張したことがある。監督兼俳優のジャッキーが映画審査制度の必要性を主張するのはなんとも不可解だ。