中国人民解放軍が推し進めている海洋戦略は、アメリカをはじめとする西側諸国では「A2/AD戦略」(接近阻止・領域拒否戦略)と呼称されている。

 以前よりアメリカ軍関係者たちの中からは、「アメリカは中国のA2/AD戦略に有効な戦略を打ち立てていない」といった声が挙がっていた。さらに昨今は、アメリカ連邦議会の軍事委員会などを中心とする国防関係議員などの間でも、「中国のA2/AD戦略に対抗する戦略やそれを実施するための戦術や施策を打ち立てなければならない」といった認識が広まりつつある。

中国の「A2/AD戦略」とアメリカの「ASB構想」

 中国海洋戦略の目的は、以下の3段階を着実に行っていくことにある。

(1)第1列島線までの海域は中国人民解放軍が完全にコントロールして、アメリカ海軍をはじめとする他国軍事力を侵入させないようにする。

(2)第1列島線と第2列島線で囲まれる海域での軍事的優勢を人民解放軍が手にして、アメリカ軍には自由な作戦行動をさせないようにする。

(3)第2列島線外部の西太平洋やインド洋でも、できるだけ遠方海域まで人民解放軍がアメリカ海軍を牽制できるようにする。

第1列島線(左の赤い線)と第2列島線(右の線)。星印は米軍拠点