昨年秋以来、気にかっている事項がある。米国が世界の警察官としての役割を降りると言明したが、本当にそうなのかどうなのかが、この1年の小生の関心事項であった。本稿脱稿時点(9月11日)に至るまでの米国が関与したいくつかの事例を検証し、本当に警察官役を降りたのかどうか、降りたとすれば日本はどうすべきなのかについて私見を述べたい。

 ウクライナ問題が何とか収束の方向が見え、イラク問題もどうやら有志連合により対イスラム国作戦を展開する方向になりつつある現時点での小生の私見である。

 バラク・オバマ政権は少なくともあと2年強は継続する。一部には、既にレームダック状態に陥っているとの指摘もあり、任期の残り2年間で、状況によっては、国際社会の構造が劇的に転換するかもしれない。次期政権は違う政策を打ち出す可能性もあるが、それを期待するのみではあまりにも芸がない。

米国は、本当に世界の警察官を降りたのか?

オバマ米大統領、イスラム国打倒に向け国際的連携を呼びかけ

NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議で会見するバラク・オバマ米大統領〔AFPBB News

1 第2次オバマ政権の大転換

 オバマ大統領は、シリア問題に関する2013年9月10日のテレビ演説で、「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」と述べ、世界の警察官の役割を降りるとの意思を明確にした。

 もっとも、歴代の政権が担ってきた「世界の警察官」としての米国の役割についても「約70年にわたって世界の安全保障を支えてきた」と歴史的貢献の大きさは強調したのだが・・・。

 この演説をどう評価すべきなのか?

 国際社会の問題解決から逃避し、第2次世界大戦前まで原則としてきた孤立主義(Isolationism、モンロー主義)に回帰しようというのか。あるいは、引き続き国際社会の諸問題に関与はするものの、軍事力の行使は抑制的に行うといのうか。

 いずれのメッセージと受け取るかは、解釈の分かれるところであるが、大統領や米国の真意は奈辺にあるのだろうか?

 米国は、自信を喪失すると、初代大統領ワシントン以来の伝統である孤立主義に回帰する傾向があるようだ。

 5月28日の外交演説では、「米国は常に世界の指導的な立場でいなければならない」と表明し、孤立主義を否定し、国際協調路線の継続を明確にしたと受け止められた。しかしながら、この演説にもかかわらず、ウクライナ、中東そしてアジアへの関与を見ると、かっての世界の警察官に戻る力も意思もないのではないかと思わざるを得ない。

 昨年9月の演説以降の米国の実際の行動を、次項で検証してみたい。