「今こそアクションを起こす時です」
9月23日、ニューヨークの国連本部で開かれた気候サミットの冒頭、気候変動問題の国連平和メッセンジャーに任命されているレオナルド・ディカプリオが、120人を超える世界の首脳を前に、早急なる対策を促す演説を行った。
レオナルド・ディカプリオの説得力ある演説
「私は架空の役柄を演じ、たびたび、架空の問題を解決してきました。人類も気候変動を架空の出来事と見てきたかのように思えます。しかし、これは現実なのです」と語り、すでに「政治や産業界が行動を起こさなければならないレベル」にまで達していると訴えるスピーチは、演技派俳優らしい説得力のあるものだった。
その様子は動画サイトなどで見ることができるが、そこにこめられた思いは、7年前に製作、進行役とナレーションも手掛けたドキュメンタリー映画『The 11th Hour』(2007/日本劇場未公開)ですでに見せていたものでもある。
干ばつ、洪水、熱波、山火事、竜巻、ハリケーンなどの映像とともに、このままでは現実のものとなりかねない惨事について多くの知識人がコメントするこの映画で、ディカプリオは「地球規模の破壊の原因は、文明を生んだ人類の英知」と語る。
動物は生き残るために日和見行動をとり続けるが、唯一人間だけは現在の行動が未来に影響することを認識できる。図書館には気候変動への対処法を記した本が数多くあるのだが、法の強制がないからか、実行されていない。
政治家は石油企業のような大きな力に弱く、環境破壊の一因は、カネまみれの政治システムにある。経済学者も自然界の無償の恩恵を計算に入れず、政府や企業が目的に挙げるのは「成長」ばかり、というのが映画の主張である。
サミットに先立つ21日には、世界各地でデモがあり、ディカプリオも参加した過去最大規模となったニューヨークでは、パン・ギムン国連事務総長やアル・ゴア元米国副大統領の姿も見られた。
そのゴア元副大統領が、地球温暖化の現状を警告しようと、世界中を飛び回る様子を追った『不都合な真実』(2006)は、今、多くを数える気候変動をテーマとしたドキュメンタリー映画の中でも、特によく知られたアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞受賞作。