マット安川 今回は長く現場を見てきた政治評論家・浅川博忠氏さんを迎え、改造内閣の評価や与野党の現状、今後の政局展望など幅広くお聞きしました。

巧妙さ際立つ改造人事。狙うは長期政権→憲法改正

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:浅川博忠/前田せいめい撮影浅川 博忠(あさかわ・ひろただ)氏
政治評論家としてテレビ・ラジオ、週刊誌などで政治解説、コメンテーターを務める。『小沢一郎 独走す』(東洋経済新報社)、『政権交代狂騒曲』(講談社文庫)など、著書多数。近著に『小選挙区制は日本を滅ぼす』(講談社)(撮影:前田せいめい、以下同)

 先の内閣改造で感じたのは安倍(晋三)首相の人事の巧妙さです。改造発表の1週間ぐらい前から、まず菅(義偉)官房長官以下、首相官邸のスタッフや、麻生(太郎)副総理兼財務大臣、甘利(明)経済財政担当大臣などの留任組を小出しに発表した。

 その後、大臣になりそうな人をどんどんリークしていきました。今回、衆参合わせて59人いた「有資格者」たちが初入閣できるかを事前に察知できるようにして、ソフトランディングに持っていった形です。このあたりはかつて人事の佐藤と言われ、7年8カ月の長期政権を敷いた佐藤栄作元総理と相通ずるやり方だと思います。

 大臣の顔ぶれからうかがえるのは、安倍さんにとって扱いやすい人を選んだということです。閣内でブレーキ役になりそうな人はあまりいません。改造人事の1週間後、たまたま当選7回生の議員2人と食事をしたのですが、彼らが異口同音に言ったのは、安倍さんにとってわれわれは学歴と年齢の両面で煙たいんだろうということでした。

 2人は70歳を少し超えた世代で、旧帝大出身なのです。そういうことからすると、例えば環境大臣になった望月(義夫)さん、防衛大臣の江渡(聡徳)さんあたりはたしかに煙たい要素がなく、扱いやすいと言えるでしょう。

 いずれにしても今回の改造内閣は、来年9月の自民党総裁選を意識した「安倍再選シフト内閣」です。安倍さんはこの先5年、6年続く長期政権を狙っています。目指すゴールは憲法改正です。通常国会の集団的自衛権行使容認は、あくまで入り口に過ぎません。

 憲法改正について、安倍さんは子供のころからおじいさんの岸信介(元首相)さんにさんざん言い聞かされました。だから政界入りしてからは、外交、防衛、憲法、教育という国の根幹の問題を一生懸命勉強してきた。戦後レジームからの脱却というのも、そういうところから派生してきたわけです。

長老2人+野田聖子、初入閣待機組・・・雌伏する反安倍勢力

 内閣支持率が高いこともあって、今の自民党内に表立った反安倍勢力はいません。そんな中、安倍さんの対極に位置するのは、今回総務会長を外された野田聖子さんです。