手にはアサルトライフルや拳銃、装甲車を伴い、防弾チョッキと迷彩服に身を包んだ男たち。ガスマスクをしている者もいれば、銃を構えている者もいる。
先進民主主義国の米国でまたも起きた黒人射殺事件
戦禍のさなかにあるシリアでもイラクでもリビアでもない。軍政のタイやエジプトでもなければ、独裁者が国民を蹂躙するアフリカの国でもない。
それは、世界に名だたる民主主義国家である米国中西部の人口2万1000人ほどの町から送られてくる写真が映し出す光景である。
8月9日、18歳の黒人男性が白人警察官に射殺された。翌日、現場付近でデモが発生し、一部暴徒化。警察は重武装で威圧、火に油が注がれ、人々は怒り、混乱は続いた。
警察は男性が逮捕に抵抗し小競り合いになったと発表。一方、丸腰で無抵抗だったとの目撃証言もあり、主張は対立。
このミズーリ州セントルイス近郊の町ファーガソンに住む人々の3分の2は黒人だが、警官のうち黒人はわずか5%ほど。市議も6人中1人だけが黒人で、黒人は差別されているとの意識が強いという。
主張が対立するこの事件を中立で解明する必要性から、セントルイス郡検察とは別に、FBIも捜査に乗り出した。
公民権法が制定されてから50年の歳月が過ぎた。その1964年夏は、「Freedom Summer」と呼ばれ、劣悪な人権状況にあったミシシッピ州の黒人のため、700人を超える公民権活動家が粉骨砕身した季節だった。
当時のミシシッピ州人口に占める黒人の割合は45%だったが、黒人は6%しか有権者登録しておらず国内最低。登録することは、白人からの暴力、解雇という肉体的経済的ダメージをも意味していたのである。
そんなミシシッピ州フィラデルフィアの町に有権者登録所を作ろうした3人の男性が、交通違反で捕まり、留置、釈放の後、消息を絶った。1人は黒人、2人はユダヤ系だった。