枋迫氏 その通り。銀行や金融当局の発想には融資と預金しかないから、手数料を稼ぐための取引は「亜流傍流」と見られてきた。だから、それに対するシステム開発や投資を銀行はほったらかしにしてきた。

社会の各階層、各顧客層ごとにニーズを満たそうと商品開発を進めれば、他行との差別化は簡単だと思う。当社は目線を下げて、あらゆる階層の人と話をしてきた。どういうニーズがあるのか、どういうサービスを受ければ嬉しいのかヒアリングを行い、それに合わせて商品を開発してきた。
収益を上げたいならば、既存の銀行もちょっと違うマーケットの膨大なニーズを敏感に感じ取り、先駆者になればよい。日本のメガバンクは看板は立派だけれど、「お客さんは用があればやって来る」という発想を続けていれば、どんどん先を越されてしまう。
JBpress 将来、日本での事業展開も視野に入れているのか。
枋迫氏 将来というより、すぐにでも始めたい。ただ、日本法人をつくり、独自に事業を行う選択は非現実的だ。コンプライアンス(法令遵守)を実現しながら、リアルタイムで世界100カ国に送金できる当社のシステムは世界に類例がなく、完成度も高い。全国店舗網を持つ金融機関やコンビニのうち、新たな金融商品で差別化を図りたい企業があれば、システムを提供したいと考えている。
今後、明らかに日本でも1000万人規模で移民を受け入れる必要が生じる。その際、出稼ぎ移民の本国送金を円滑にするインフラの整備は、ホスト国の責任になる。国家プロジェクトとして、政府主導で行うべきものだ。逆に言うと、こうしたインフラも準備せずに移民に来てもらうのは、失礼というか無責任な話になる。日本の意思決定に携わり、先行きを論じるべき人は、それぐらいのビッグピクチャーを持たなければならない。
