社会医学環境衛生研究所・所長の谷康平氏をゲストに迎えた今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(7月27日放送/Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)。医療と健康にまつわるさまざまな情報を多くの人に伝えることを目指して活動をする谷氏が、自身の取り組みなどについて語った(今回は海外出張中の中山氏とゲストナビゲーターの谷氏による電話トーク)。
1日あたり1000人が、がんで死亡している
中山 今回は社会医学環境衛生研究所・所長で、私の小学校時代の先輩でもある谷康平さんにお話を伺います。谷さんは社会医学環境衛生研究所でどんな活動をされているのですか。
谷 英語で「パブリックヘルス(public health)」と言いますが、公衆衛生学に取り組んでいます。一般的に医療というのは個人の患者さんを治療しますが、公衆衛生学は病気の予防や環境公害の対策などを取り扱う分野です。
我々は主に食べ物や環境問題について研究をしていますが、一例として煙草を挙げましょう。海外へ行くと分かりますが、日本以外で煙草の自動販売機を見る機会は少ないと思います。子どもにとって有害な煙草をわざわざ自動販売機で売っているのは日本くらいなんです。
そこで約10年前、各政党の中で我々の話に耳を傾けてくれる人たちにアプローチを行い、成人識別ICカード「taspo(タスポ)」が導入されたことで、煙草の購入には身分証明書が必要となりました。
このように、特定の患者さんを対象にするのではなく、様々な社会の仕組みに対して、現在考えられる範囲の中で提言をしていくのが社会医学環境衛生研究所です。
中山 タスポの事例をご紹介いただきましたが、他にはどんな活動をされていますか。
谷 昨年の日本の死亡数はおよそ127万人ですが、死因のトップはがんです。年間約36万5000人ががんで死亡しており、1日あたり1000人が亡くなっている計算になります。これに次いで多いのが心臓病や肺炎、脳卒中などの脳血管疾患です。
1980年時点ではがんが2位で脳卒中が1位でしたが、1981年に逆転しました。ここで興味深いポイントがあります。当時はがんも脳卒中も死亡数はそれぞれ約17万人だったんですよ。その後、医学の進歩により脳卒中の死亡数が約12万人に減少したのですが、がんは何と倍増しているんです。