7月25日 田村憲久厚生労働大臣は、65歳から74歳の「前期高齢者」を「若年高齢者」へ、75歳以上の「後期高齢者」を「熟年高齢者」へと呼び方を変える案を公表しました。

 確かに、後期高齢者という呼び方を「冷たい」と批判する人がいます。そうした声に対応しようとする意図は分かります。けれども、呼び名は決して本質的な問題ではないはずです。

 2年ほど前に本コラム「『数%しか有効性のない医療はもうやめます』」で、アメリカの“Choosing Wisely”(賢く選ぼう)キャンペーンを紹介しました。無駄な医療をなくそうというアメリカ医学会のプロジェクトです。

 同様の動きは、欧州各国やオーストラリアにも広がりを見せています。“念のため”行っていても症状の改善や治癒につながらない医療行為は数多くあります。そうした医療行為をなくそうという動きは、世界的なものになってきています。

 アメリカの9つの医学会が始めた“Choosing Wisely”は、現在、50の医学会が250以上の「現在行われている無駄な医療のリスト」を公表するまでになっています。公表されたリストを詳細に見ていくと、「余命10年未満の人に予防的検査や治療は無効なのでやめるべし」という方向に進んでいることが分かります。

 アメリカから黒船が襲来しているのに、日本の医療はいつまで高齢者の呼称のような感情的問題にこだわり、ガラパゴス化を続けてゆくのでしょうか?

終末期医療や高齢者に対する「無駄な医療」とは

 “Choosing Wisely”キャンペーンにこの2年で新しく追加されたリストを見てみましょう。

・認知症のある人に対して胃ろう(筆者注:胃に穴を開けて栄養を流し込む処置)による経管栄養を行ってはならない。

・70歳以上の高脂血症に対してコレステロールを下げる薬を出してはならない。