日本経済復活の決定打となる重要施策は日本とアジアを結ぶ航空インフラの整備である。と言っても飛行機の運航速度を上げるのではない。主要ターミナルから飛行機搭乗までの時間を短縮することによって空港利用の利便性を大幅に向上させることが主眼である。

 筆者はかねてこの主張を繰り返してきたが、ついにその第一歩が動き出そうとしている。7月15日付日本経済新聞の1面トップで「羽田-東京18分に短縮」と報じられたのである。

 このコラムでも2012年12月2013年5月2014年2月の3回にわたり、羽田、成田、中部、関空等日本国内の主要空港と東京、名古屋、大阪等主要ターミナルを結ぶ高速鉄道建設の意義を述べた。筆者自身の講演でも、しばしばこの空港関連インフラ建設の重要性を訴え続けてきただけに、このニュースは本当に嬉しい知らせである。

 そこで今回は改めてこの新線建設の巨大な経済効果と残された今後の課題について整理してみたい。

日本の航空インフラの大幅改善が必要となった時代背景

 経済のグローバル化が始まるはるか以前、日本の1960年代から70年代にかけての高度成長期に最大の経済誘発効果を持った投資は東海道新幹線と東名高速だった。当時、海外との経済交流は主に貿易であり、相手国は欧米先進国が中心だった。

 1990年代以降、経済のグローバル化の進展とともに、国境を越える投資が急速に拡大し、多国間経済関係の緊密化が進展した。それと並行して中国を中心にアジア諸国の経済が順調な発展を遂げ、円高の効果も加わり、日本企業のアジアビジネスも目覚ましい勢いで増加した。

 このような経済環境の変化は必要とされるインフラも変えた。高速鉄道、高速道路に加え、国境を越える航空網が重要な交通手段となっている。

 それにもかかわらず、日本の航空インフラは2つの点でそうした時代環境の変化に対応できていなかった。

 第1に、発着枠の不足、そして24時間発着体制の未整備である。グローバル化時代の航空網活用ニーズは大幅に高まっていたにもかかわらず、日本の主要空港はそれに対応できていなかったため、韓国の仁川空港等にハブ機能を奪われた。