今年の1月に続いて4月下旬に北京、上海等に出張し、中国の現場に足を運んで強く感じたことは、日本企業の中国ビジネスが着実な歩みを続けていることだ。
中国における日本企業の着実な歩みは日本に伝わっていない
残念ながら、この事実は日本にはあまり伝わっていない。日本のメディアは今もなお尖閣問題の悪影響の深刻さを強調し続けているため、そのトーンに符合しない日中経済関係の改善を示す事実は報道しにくい。
日本企業の側も中国で成功しているという話が日本に伝わって自社の経営にプラスとなることは少ない。むしろ日本人の一部から反感を招くことを懸念して、自社の成功事例を外部に伝えないようにしている。
このため、本年入り後は尖閣問題の影響が小さくなり、日本企業が増産のための新工場や販路拡大のための新店舗を続々と立ち上げている事実は日本国内ではあまり知られていない。
中国人の間では相変わらず日本の製品・サービスに対する信頼は厚い。「日本」と言えば、安心・安全・高付加価値の代名詞である。
しかも日本企業は、(1)一度進出すると撤退しない、(2)業績が良く納税額も大きい、(3)人材の教育・育成に熱心という特徴が高く評価されている。このため、中国各地の地方政府は日本企業に対して積極的な誘致姿勢を変えていない。
しかし、尖閣問題以後、日本で反中感情が強まったのと同様、中国でも反日感情が強まった。地方政府の日本企業に対する歓迎姿勢が目立つと、インターネット等で一部の中国人から厳しい批判を受ける。
それを懸念して、日本企業に対する誘致は水面下で目立たないように、しかし、積極的に展開している。これもメディア報道には載らないため、一般の日本人はこの事実を知らない。
習近平政権の政治基盤の脆弱さが対日強硬姿勢継続の背景
中国政府は対日外交に関して、引き続き強硬路線の姿勢を崩していないほか、尖閣諸島周辺海域への領海侵犯も高い頻度で繰り返されている。
こうした外交・安全保障面の姿勢と地方政府の本音は違う。地方政府にとって日本企業の進出は現地の雇用と税収を支えてくれる大変ありがたい存在だ。中央政府もその点は理解している。