福島第一原発の南側10~20キロにある福島県富岡町を訪問した際の報告を続ける。2014年5月中旬、同町内のJR駅である「夜ノ森(よのもり)」駅とその周辺の住宅街を訪ねた際の報告である(前回はこちら)。
あっけなく線路の東側に
「夜ノ森」駅の西側を、とぼとぼと線路沿いに歩いた。
靴底に何か当たる感触がした。ふと見ると、歩道のアスファルトが割れ、そこから硬い植物の芽が生え出していた。桜並木のサクラが芽を出したのかもしれない。タケノコかもしれない。
ケーンケーンと鋭い声がした。ぎょっとして音の方を見ると、バタバタと羽音がして、ばかでかいキジが1羽、土手から飛んでいった。
人がいない間に「自然」がかつての自分の領域を回復しているように思えた。
広い通りに出た。前方を見ると、この道路は線路をまたぐ橋が封鎖されていない。そのまま線路の反対側に出てしまった。
あっけにとられた。線路のこちら側は立ち入り禁止じゃなかったのか。つい数百メートル北(原発寄り)の橋は封鎖されていた。
まあ、いい。どうせ東京で事務机に座った官僚が地図に線を引いて決めた境界線だ。意味なんかない。
線量計を取り出す。毎時3.19マイクロシーベルト。原発事故前の60倍以上である。まだ除染もされていないのだろう。
試しに橋を往復して両側の線量を測った。どちらも毎時3.19マイクロシーベルト。
バカバカしい。何が違うというのだ。