ニッケイ新聞 2014年5月27日

 「コッパの中のコッパをやる」―。そんなジウマ大統領の発言が波紋を呼んでいるが、ある意味ではその通りかもしれない。国際サッカー連盟(FIFA)によれば、少なくとも動いている資金の金額やマーケティングではこれまでのW杯の記録を全て塗り替える、最大規模の大会となりそうだ。24日付エスタード紙が報じた。

 伯国大会によってFIFAが得る収入は、2010年大会より8億ドルも多い40億ドルに上るといわれる。しかし、一方で支出金額は20億ドル近くにも及んでおり、関係者によれば「こんなに(金を)使ったことはない」という。ちなみに前大会でFIFAが得た収益は32億ドル、その前は19億ドルで、支出はそれぞれ12億ドル、17億ドルだった。

★写真:「恥ずかしい思いをしている」と発言したロナウド氏(Foto: Tania Rego/ Agencia Brasil) 

 大会の放映権を買うのにテレビ局が支払った金額も、約17億ドルと過去最高だ。観客者数も最高、取材の登録をしたジャーナリストの数も1万4000人と記録的だ。

 スタジアム建設への投資金額は85億レで、これも過去最高の金額に上る。この金額は2007年にCBF(ブラジルサッカー連盟)が示した金額の3倍で、過去のドイツ大会での42億レ、南アフリカ大会での23億レを足しても及ばない金額だ。

 試合のチケット申し込み枚数も過去最高で、300万枚の枠に1100万枚の申し込みがあった。

 優勝チームへの賞金も過去最高で、3500万ドル。また3億2300万ドルが他の31の代表チームに振り分けられる予定で、チームによってはこれまで選手が受け取った金額としては過去最高になるというチームもある。またFIFAは、参加する32カ国のサッカー連盟に対してあわせて480万ドルを支援している。

 サッカークラブにも利益が大きい。代表選手が所属するチームにFIFAが支払う金額は7千万ドルにも及ぶ。コカコーラなどの大会6大スポンサーは、W杯のロゴ使用やスタジアム内での宣伝をする権利に7億ドル支払っており、これも過去最高だ。

 しかし、これだけの金額が動く大会に向けては種々の準備の遅れが目立ち、FIFAを苛立たせている。3週間前に迫った今、元伯国代表メンバーで実行委員会のロナウド氏は23日、ロイター通信のインタビューで「残念で、恥ずかしい思いをしている。FIFAが政府を批判するのは正当」と発言した。

 これに対し、ジウマ大統領は24日にブラジリアであった青年社会連合(UJS)第17回大会でのスピーチで冒頭の発言をし、「何も恥ずかしい思いをすることはない。我々の能力とこれまでやったことを信じ、誇りに思う」と話した。

注:伯国=ブラジル

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