元防衛庁長官で現自民党特命担当副幹事長の中谷元・衆議院議員をゲストに迎えた今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(5月18日放送/Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)。南シナ海でにらみ合いを続ける中国とベトナムの緊張関係を取り上げたほか、集団的自衛権の行使容認をめぐる議論の現状や課題などについて語った。
中国とベトナムの対立は対岸の火事ではない
中山 南シナ海では中国とベトナム当局の船がにらみ合いを続け、緊張が高まっていますが、まずはこの話題について考えをお聞かせください。
中谷 歴史は生き物です。今は平和でも、明日の世界はどうか分かりません。今回の問題は、明日の日本の問題でもあります。
すなわち、沖縄県の尖閣諸島付近で連日のように中国公船が領海侵犯を繰り返し、周辺海域に居座るケースが増えつつありますが、これをいかに排除するか。
言うなれば我が国の状況はベトナムと一緒で、よほどしっかりやらないと尖閣は中国に占領されかねません。防衛のあるべき姿を真剣に考える時期に来ているのです。
歴史を振り返ると1972年、日中共同声明により日本と中国は正常な国交関係を樹立しました。この声明は日本側が田中(角栄)元首相、中国側が周(恩来)元首相の署名により成立したもので、締結当時は2国間にある程度の信頼関係がありました。
それが、江沢民・元国家主席の時代以降は経済が豊かになり、軍事力も膨張したことで、中国は容赦なく資源や領土を求めるようになってきています。その辺りを意識しなければ、日本はますますつけ入られるでしょう。
中山 ベトナム国内ではデモの一部が暴徒化して工業団地を襲撃し、中国企業と間違えられた日系企業が被害を受けたという報道も目にしました。そうした中、ベトナム政府は18日、暴力的な行動は許さないと事態の沈静化を図る姿勢を示したそうです。
中谷 政府が事態の沈静化を図るのは賢明な判断です。どの国にもナショナリズムがあり、自分の国を愛するのは自然なことです。ただ、一度外国の排斥運動に火がつけば止まらなくなってしまう。これを制御するのは政治の役割でもあります。
日系企業は大きなとばっちりを受けてしまいました。日本の企業は真面目で丁寧な仕事ぶりから、アフリカなどへ行くと現地の人に愛されているのがよく分かります。一方で中国は、意地が悪くて利益を与えないため嫌われているようです。
日本人が中国人と間違えて投石されるなどのケースも耳にしますが、同じアジアの国家として、中国にはもっと信頼に値する振る舞いを期待したいと思います。