南海先生 実際に日中間に武力衝突が起こった場合、日米安保条約があるにもかかわらず、米国は日本に対して、中国との妥協を迫って尖閣諸島の領有権を放棄するように日本に促すのではないかと、教授は懸念していたよ。それほど、ワシントンでは日本より中国が重要だと考える勢力が影響力を増しているそうだ。
それだけではない。今後10年で中国の軍事力は大幅に増強される。そのときに米国の核の抑止力は期待できないそうだ。つまり、中国が日本を核攻撃した時に米国が中国を核攻撃で反撃してくれるとは期待できないそうだ。
だから、日本は、英国やフランスのように、自分で核武装して自ら反撃能力を持たないと中国に対する抑止力にならなくなる。そんな難題が日本にこれから突き付けられるそうだ。恐ろしいのう。お前たち2人が敵味方に分かれて戦う姿など見たくないぞ。
いつの間にかできていた米中経済同盟
中国青年 南海先生、そんな米国人の教授の言うことなど米国政府の陰謀の一環に過ぎません。大体、学者といえども、こと外交や軍事については、米国の国益の代弁者に過ぎないでしょう。
そもそも、太平洋からインド洋まで支配し、台湾海峡にまで空母を派遣して、中国に対して軍事的な脅威を与えているのは米国です。
南海先生 しかし、中国は、現に、日本、ベトナム、フィリピンに対して軍事衝突寸前の行動を繰り返しているではないか。この教授の説明は相当説得力があるぞ。
日本青年 私も、そんな米国の教授の話は到底信じられません。何で米国が、理不尽な中国に屈して同盟国日本を見捨てるのですか?!!
南海先生 米中経済同盟ができてしまったからじゃ。そもそも、1992年の鄧小平の南巡講話で始まった第2次の改革開放、その後のビル・クリントン大統領との米中戦略パートナーの頃から米中は「米中経済同盟」というべき時代に入ったというのが山﨑養世氏の説だ。
山崎氏は「米中経済同盟を知らない日本人」という本を7年も前の2007年2月に書いて、今の事態を予言しておる。もっとも、この本の内容は、米中に限らず「世界の分かれ道」ともいうべき洞察に満ちておるがな。
日本青年 米中経済同盟?それは日米同盟の間違いではないのですか。米国と同盟関係にあるのは日本であって中国ではありませんよ。
中国青年 その通りです。我が国は米国から敵国のように扱われ、人民元が不当に安いなどと批判されています。そもそも、我が中国は、米国と経済同盟など結んでいません。我々は、日米同盟による軍事的な脅威に常に対抗する必要があるのです。
南海先生 どうやら、2人とも、じっくり説明する必要しないと分からんようじゃな。来週この日のこの時間に、この鳥居の下に来るがいい。
そう言うと、南海先生も中国の青年も消えてしまった。