週刊NY生活 2014年5月3日488号
ニューヨークは映画製作で東のハリウッド。若手作家が創作の資金集めにクラウド・ファンディングを使うケースが増えている。映画の企画を紹介し、それに賛同した一般投資家が世界中どこからでも寄付できる。
募集期間は1か月。期限内に目標金額に到達しない場合は帳消しとなる。新しい資金調達方法として注目されている。現在、資金募集中の2作品を紹介する。
リベリアとNY舞台-福永監督
剣道と国境越えた愛-グッゲンハイム監督
長編劇映画「Out of My Hand」は、リベリアのゴムプランテーションで働くCisco(シスコ)が、自分や幼い2人の子供の未来のために単身ニューヨークに移住し、タクシー運転手として新しい生活を送りながら、自分を発見していく姿を追う。
北海道伊達市出身でニューヨーク在住の日本人監督の福永壮志さん(31)は、2013年の春に、リベリア映画組合と地域住民からの厚い支援を受け、この映画の主要部分であり作品全体の約70%に相当するリベリアでの撮影を終えた。
残りのニューヨークでの撮影資金の一部、3万5000ドルを集めるべく、キックスターターでの支援を募っている。
現在53人から4835ドルの寄付申し込みがきている。締め切りは5月24日。本作の製作を共にした撮影監督の村上凉さんが昨年マラリアにより34歳で死亡。福永監督の長編デビュー作が村上さんの遺作ともなる。
ニューヨークシーンの撮影は10日間を予定しており、リベリア人キャストやクルーの渡航費は、リベリア政府が負担してくれることになった。支援金は、ニューヨークでの事前準備と撮影費用(主にキャスト出演費、スタッフ人件費、機材費、美術、衣装、ロケ地)として活用する。
福永さんは2003年に来米、ブルックリンカレッジで映画を専攻した。
問い合わせはoutofmyhandthemovie@gmail.com
もうひとつは、ニューヨーク在住のアメリカ人映画監督、エミー・グッゲンハイムさんが製作する作品「ナイト・ターンズ・トゥ・デー」。アメリカ人剣道家と来米した日本人剣道家との、剣道を通した恋を描く。
さきごろ「ザ・レイルロード・マン」で日本兵通訳を演じた俳優の石田淡朗が主役として出演を快諾しているほか、音楽家の坂本龍一が同作品に関心を寄せてくれているという。
グッゲンハイムさん自身が剣道との出会いによって、日本文化に魅せられ、日米のクロスカルチュラルな作品を手掛けるきっかけとなった。構想から8年余り。本格撮影に入るための予告編製作のために必要な9000ドルを5月21日までにクラウド・ファウンディングで募っている。4月29日現在で3676ドルが集まっている。
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