経営力がまぶしい日本の市町村50選(26)
これまでにご紹介してきた経営力がまぶしい日本の市町村は、政府が進めていた市町村合併、いわゆる平成の大合併にあえて❝反旗を翻し❞て独立独歩の道を選んだ自治体が多かった。
合併して大きくなることは机上の計算では行政サービスの効率が増すことになるというのが政府の説明だったが、実際にはコスト削減やサービスの品質向上などに取り組まなければならない現場のやる気を失わせるとの判断からだった。
政府の方針に反するという非常に苦しい選択だったものの、逆に自治体の危機意識が高まり、改革が成功に向かって進み始めたわけだ。
今回ご紹介する東近江市はそれとは全く逆。市町村合併の道を選びながら自らの経営力を高めているのだ。企業でも同じことが言えるが、責任の所在が曖昧になりやすい合併は、うまくいくケースはあまりない。
東近江市はどうやって合併の欠点を長所に変えることができたのか。その秘密を2回に分けてお伝えする。ナビゲーターになっていただいたのは、東近江市で改革の旗振り役の1人を務める総務部まちづくり協働課主幹の山口美知子さん。
どこからエネルギーが出てくるのかと思うほど、朝から晩まで東近江市を良くするために動き回っている。
政権、市長が交代しても継続する「市民活動」
川嶋 東近江市が発足して来年で10年になります。まずはこの間のまちづくりの取り組みについてお聞かせいただきたいと思っています。
山口 東近江市は2005年に1市4町が合併し、翌年に2町が編入し現在に至っています。その間、3人の方が市長を務められましたので、合併以降、総合計画の見直しや打ち出される政策も若干リニューアルされています。ただ、東近江のいろいろな市民活動はずっと継続してきています。
例えば、総務省の調査事業の委託を受けられたこともあって、2010年に西澤(久夫)前市長の下、「緑の分権改革課」という課を新設し「食・エネルギー・ケア」の自給圏の創造に取り組んできました。言い換えれば、中央集権型から地域分散型の社会への転換を目指すということです。
これは壮大な計画なので2~3人の職員では到底まかなえません。そこで何をすべきか話し合った結果、東近江というのはもともと市民のみなさんで課題を解決していこうという動きがある地域だったので、私たち市の職員はそれを応援するような取り組みをしていくことにしました。
例えば、中間支援の仕組みをつくったり、資金調達に困っている団体があれば、資金調達の仕組みづくりをしたり、といったことです。しかしその間に、民主党から自民党に政権が代わり、市長も交代し、緑の分権改革という言葉を課名にかかげるのが難しくなりました。