2014年の農業界の大きなニュースの1つとして挙げられるのは、3月28日に行われた農業特区の設置でしょう。

 いわゆる国家戦略特区の第1弾として、新潟市と兵庫県養父市が指定されました。新潟市は「大規模農業の改革拠点」として、養父市は「中山間地農業改革拠点」として規制緩和のモデルとなる道を進んでいくことになります。

 しかし、両市が名乗りを上げたはいいが、前途は多難です。新潟市の場合、3月28日に篠田昭市長が「大変ありがたい。今後は経済界や意欲のある農家と連携し早期に区域計画を作っていきたい」と述べ、4月9日に推進本部を設置し「農家や地域、企業からアイデアをもらって区域計画を作る材料を早急に出してほしい」というような状況です。

 要は、とりあえず手を上げたら採用された。何をするのかはこれから考えるということで、明確なシナリオがあったわけではなさそうです。

 養父市も、4月10日、改革の目玉となっている農地売買の許認可権限を市に委譲することに、委譲する側の農業委員会が不同意の意見書を市長に提出しています。

 もともと以前から大規模農業化や中山間地農業の再生に真剣に取り組んでいて、この法的制限さえ突破できれば未来が開けるといったビジョンがある場合には、こうした特区の指定を受けることは再生に繋がるでしょう。しかし、そんな明確なビジョンなき特区が成功するとは私には思えません。

目新しさのない農業特区の方向性

 とはいえ、せっかくの改革の試みです。どうすれば新しいビジョンが開けるのか、ない知恵を絞ってみることにしましょう。

 新潟市の場合、今回の農業特区の方向性はおおむね以下のようなものになるようです。

(1)大規模農家を育てるために土地の流動化を進める。そのために農業委員会から土地管理の権限を市に移す。