「これが町なのか!?」自らの目を疑うしかなかった。30階を超すような建物がいくつもそびえ立ち、5つ星ホテルがずらりと並んでいる。ホテルの1つに入ってみると、確かに豪華で落ち着いた雰囲気があった。
5つ星クラスのホテルが北京の半額!
そのうえ宿泊料が驚くほど安い。ツアー会社を通さず直接窓口で申請して予約すると、1晩500元といったところ。北京なら少なくとも1000元はする。なぜこんなにも安いのか。心の中で思わず叫んでしまった。「ここはドバイか?」と。
現地の地主たちに聞いてみると、「この町は海外からの商人たちを誘致し、加工工場を経営することで成り立っている。ホテルが格安なことはそれだけでアドバンテージになるんだ」と返してきた。
東莞(Dongguan、ドングアン)市は中国広東省中部、珠江デルタの北東部に位置する。二十数カ所の鎮と行政の中心である区で構成され、面積は2465平方キロメートル。
古くから莞城鎮(「鎮」は日本の「町」に相当)と、水運の要地である虎門鎮(近代、林則徐がここで英国商人から没収したアヘンを処分したことは有名)を中心に街が形成されていた。赤土が広がる貧しい農村だった。
1985年9月に「市」に格上げされた。鄧小平氏が推し進めた改革開放政策の恩恵を最も直接的に受けたのが東莞だ。広州と深セン、香港のちょうど中間に位置する。
タクシー代は北京の2倍以上
香港や台湾企業の委託加工先や工場建設の好適地として、衣料品、日用雑貨、玩具、電子製品、パソコンまで、各種工場が林立する工業地帯に変貌した。中国が「世界の工場」と呼ばれるようになって久しいが、東莞は自他共に認める中国最大の「工場地帯」と言える。
私自身これまでも何度か足を運んだことがあったが、今年の旧正月、2~3月にかけて1カ月ほど、この東莞に潜り込んだ。
日常生活で最も印象的だったことが、タクシードライバーとのやり取りである。首都北京のタクシーは初乗り10元、1キロごとに2元上がっていく。日本人の感覚からすればかなり安い。
地方に行けば行くほど安くなるのが普通で、四川省の成都や西安など内陸都市で初乗り5~7元といったところだ。