マット安川 進まない復興、縦割り行政の政策――陸前高田の復興支援団体「Aid TAKATA」を率いる村上清さんが初登場。官僚とのやりとりなど山積する日本の悩ましい問題をお聞きしました。

仮設住まいの被災者はまだ多数。復興は遅々として進まない

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:村上清/前田せいめい撮影村上 清(むらかみ・きよし)氏
Aid TAKATA代表(撮影:前田せいめい、以下同)

村上 陸前高田市は公共施設も商業施設も住宅も学校も、何もかもが市の中心部の平地に集中していました。津波はそれらを全部流し去り、街は文字通り壊滅しました。

 震災前にあった8000世帯の半分、4000世帯が消え、亡くなった方は1800人強。今も215人の方が行方不明です。

 何よりみなさんに知ってほしいのは、仮設住宅住まいの方がまだたくさんいることです。通常の仮設住宅は2200戸、空き屋などを使った見なし仮設も入れると全部で3000戸に上ります。

 被災者の立場としては市長や市の職員は何をやってるんだと言いたくなりますが、彼らは24時間、本当に頑張っています。私は震災の日を香港で迎え、4日後には故郷の陸前高田に入りました。以来、一緒に活動してきましたから、彼らの奮闘ぶりはよく知っています。

 津波で市役所も流されましたから、市長は唯一残っていた給食センターの事務室で陣頭指揮を執りました。市の職員の3分の1は亡くなり、無事だった方もみんな被災者です。そういう中、行方不明者の問い合わせへの対応に、物資の配給に、彼らは本当に一生懸命取り組みました。

 もちろん自衛隊やボランティアの方々など、多くの方がご尽力くださいました。それでも復興は遅々として進んでいません。市街地のかさ上げ工事に着手できたのも、つい最近のことです。

政府は、中央官庁は、被災地のことを分かっているのか!?

 復興が進まないひとつの要因は、何かをやろうとするとそのたびに煩雑な手続きを求められることです。

 山を削って警察署と消防署、コミュニティホールなどを建てることが決まっても、それを発表してからいろいろな壁にぶつかりました。途方に暮れたのは、山の杉の木を切ろうとしたら林野庁から待ったがかかったときです。

 40年前に国の補助金を使って植えた木だから、伐採するには補助金の対象から外さないといけない、それには半年かかるというんです。その後も次々とこの種のバカげた邪魔が入って、工事に取りかかれませんでした。